通常級・特別支援学級 交流ワークショップの実践 vol.1
芸術家と子どもたちでは、令和5(2023)年度「公益財団法人 パブリックリソース財団」による「Y’sファンド D&I基金」の支援を受け、都内公立小中学校3校で通常級と特別支援学級の子どもたちが共同でワークショップを体験する交流ワークショップのプログラムを実施しました。
日本の学校教育のなかでは、通常級と特別支援学級の子どもたちが行事や給食、一部の授業などで交流する機会はありますが、理解する・ケアするという視点ですすめられることが多いのが現状です。
そこで、そのような関係ではなく、対等な関係性のなかでさまざまな枠組みを意識することなく、身体を動かしながら自然なかたちで体験を共有する機会となるよう、振付家・ダンサーとして活躍するアーティストを学校に派遣し、通常級と特別支援学級の交流ワークショップを実施しました。
今回のコラムでは、交流ワークショップの概要や実施の様子を、先生・子どもたちの感想とともにご紹介します。
【交流ワークショップ 実施概要】
(1)都内 A 小学校 ●対象 ●実施スケジュール [2日目] [3日目] |
(2)都内 B 小学校 ●対象 ●実施スケジュール [2日目] |
(3)都内 C 中学校 ●対象 ●実施スケジュール [2日目] |
【ワークショップの進め方】
ワークショップを実施する前に、先生方と打合せを行いました。
特別支援学級の先生からは、様子を伺ったり授業見学をするなどして、どんな子どもたちがいるかをヒアリングしました。その後、通常級の先生も交えて、通常級の子どもたちの様子や、普段は通常級と特別支援学級の子どもたちのあいだでどんな交流の場があるか、先生方のご希望などを丁寧に聞き取り、ワークショップ実施に向けて打合せを行いました。
●特別支援学級のみのワークショップ
いずれの学校においても、1日目に特別支援学級のみのワークショップの時間を設定し、2日目・3日目に通常級との交流ワークショップを実施しました。
特別支援学級の子どもたちがはじめて出会うアーティストに慣れること、ワークショップの内容やルール等の理解に時間がかかる場合があることなどを考慮し、はじめは特別支援学級のみでワークショップを実施し、その後に通常級と交流することで、安心して取り組める環境を整えました。
●通常級の子どもたちとの人数比
通常級との交流にあたり、通常級と比べると特別支援学級は人数が少ないため、できれば通常級1クラスと特別支援学級の子どもたちとで実施することで、交流がより一層深まっていくと考えています。しかし、学校によってはクラス数が多い場合もあり、体育館・時間割調整などの学校事情を考慮し、今回の実施では、通常級の学年全体との交流、または2クラスずつとの交流を検討することになりました。
【ワークショップの様子】
●1日目:特別支援学級のみのワークショップ
1日目は特別支援学級の子どもたちとアーティストがはじめて出会うとき。身体を動かしながら様々な表現を体験していきます。
アーティストによってワークの内容は異なりますが、例えば、手のひらと手のひらを近づけて、互いの呼吸をあわせて動くワーク、新聞紙を動かす人と、その新聞紙を見て感じながら身体で表現していくワーク、ペアになって相手の関節を曲げていくことでさまざまな身体の形を体験するワーク、1本足で立つ表現からはじまり、3本足、5本足というお題で、子どもたちそれぞれのアイディアを活かしながら表現を引き出すワークなどを行いました。
どのワークも、まずはアーティストとアシスタントがお手本を見せることで、子どもたちはそれを見て、実際に体験してみることを繰り返し、さらに慣れてくると自分たちなりの表現を探しはじめる姿がありました。
●2日目・3日目:通常級と特別支援学級の交流ワークショップ
1日目に楽しくワークショップを終えた子どもたちは、2日目の通常級との交流ワークショップも、自信をもって安心して臨むことができました。
基本的には、1日目に特別支援学級の子どもたちと行ったワークのなかのいくつかを通常級の子どもたちも交えて実施しました。アーティストによって方法は異なりますが、ペアをどんどん変えていく方法をとったり、たくさん走り回って止まったあとに近くにいる人とペアを組んだり、あるいは、先生にあらかじめグループをつくっておいてもらい、特別支援学級と通常級の子どもたちが混ざるように混ぜ合わせて新たなグループをつくるなど、ワークのなかでなるべくいろんな子どもたちが交流できるように実施しました。
1日目のワークショップを体験している特別支援学級の子どもたちには、アーティストがワークを見せる際のお手本として前に出てきてもらったり、1日目に創作したポーズを通常級の子どもたちに披露することもありました。
また、言葉を用いずに身体を動かして交流していくことから、特別支援学級だけではなく、通常級のなかで言葉で伝えることが得意ではない子どもたちにとっても、自然とまわりとコミュニケーションをとることができており、あちらこちらで笑顔がこぼれているのが印象的でした。
【子どもたちの感想】
[特別支援学級の子どもたち] ~中学生~ |
[通常級の子どもたち] ~中学生~ |
【先生の感想】
[特別支援学級 教員] ~中学校~ |
[通常級 教員] ~中学校~ |
今回のプロジェクトは「D&I=ダイバーシティ&インクルージョン」の視点から、通常級と特別支援学級の交流ワークショップを実施しました。大人と子ども、特別支援学級と通常級…、いろいろな枠組みがありますが、その前に一人ひとり違う感覚や表現を持っていることをどのアーティストも大切にして、ワークショップを実施していきます。一緒に身体を動かすこと、一緒に微笑むこと、そんな優しい時間があれば、なんとなく心地よく一緒にいる時間も増えるかもしれません。休み時間や遊びの時間だけではなく「ワークショップ型授業」で他者との関わりを体験することで、その後の交流のきっかけとなっていたら嬉しく思います。
今回の交流ワークショップを実施していただいたアーティストの皆さま、ご協力いただいた先生方、そして子どもたちに、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
後日、交流ワークショップを実施したアーティストのコメントを掲載したコラムと、外部アドバイザーから見た交流ワークショップに関するコラムを掲載予定です。どうぞお楽しみに。
※4/8追記:コラムの続編が公開されました。是非ご覧ください。
>>「通常級・特別支援学級 交流ワークショップの実践 vol.2 ~アーティストの視点から~」はこちら
交流ワークショップを実施したアーティスト3名それぞれの実施後コメントを紹介しています。
>>「通常級・特別支援学級 交流ワークショップの実践 vol.3 ~外部アドバイザーの視点から~」はこちら
交流ワークショップを視察した外部アドバイザーの海老沢穣さんによるコラムをお届けしています。
[助成] 公益財団法人パブリックリソース財団(Y’sファンド D&I基金)
写真・編集:NPO法人芸術家と子どもたち
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