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コラムColumn

地域のセーフティネットとしてのアーティスト・ワークショップ ~3年間を振り返って~(前編)

芸術家と子どもたちでは、2020~2022年度の3年間、休眠預金活用事業の資金分配団体であるNPO法人まちぽっとの助成事業「市民社会強化活動支援事業(Pecs)」の実行団体に採択していただき、「プロの芸術家による表現ワークショップを通じた当事者の交流及び共同創作事業」を実施してきました。

この事業は、東京都内において、児童養護施設に暮らす子どもたちや、子ども食堂等、地域の子どもの居場所を利用する子どもたちが、アーティスト・ワークショップを通して交流し、当事者同士や、関係施設や団体、連携機関等のつながりを強化すること。そして、多様な困難を抱えた子どもたちへの支援が拡充されるとともに、彼らの地域社会への参加や自立が促されることで、人と人の支えあいが可能な地域・社会になると考えてスタートしました。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、児童養護施設での実施が難しくなった一方、豊島区内で様々な形で子ども支援を続けている認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク(以下、WAKUWAKU)との連携が進み、豊島区内の子どもたちとのワークショップを始めることになりました。演劇など表現活動に興味がある子どもたちを区内の集会室に集める形でワークショップがスタート。そこから、ひとり親家庭や、外国にルーツを持つ子どもたち、そして母子生活支援施設で暮らす子どもたちなどとの出会いにつながっていきました。

3年目の発表会が終わった後、子どもたちと私たちをつないでくださった関係者の方々と、アーティスト、アシスタントの皆さんとで、事業評価を兼ねた振り返りの場を設けました。子どもたちの変化や、アーティスト自身の変化、地域でこうした場があることの意味や可能性などを伺いましたので、前後編のコラムでご紹介します。

■3年間の実施概要

 


■振り返り会概要

  • 実施日時:2022年11月27日(日)16:00~17:30
  • 実施場所:上池袋コミュニティセンター 多目的ホール
  • 参加者:
      認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク /栗林知絵子、石平晃子
      愛の家ファミリーホーム(母子生活支援施設)/小川景也
      アーティスト/渡辺麻依(演出家・俳優)、酒井直之(振付家・ダンサー)、中村大史(音楽家・作曲家)
      アシスタント・アーティスト/佐藤円(俳優)、金子由菜(俳優)、豊田ゆり佳(ダンサー)
      NPO法人まちぽっと/小林幸治、金和代
      NPO法人芸術家と子どもたち/堤康彦、中西麻友

■3年間を振り返って、子どもたちへの影響

 -参加した子どもたちの、それぞれのご家庭への影響や、プレイパークや学習支援などWAKUWAKUの他の活動と関連して、今回のプロジェクトが何か変化や影響をもたらしたことはありましたか。また、3年間を振り返っての感想を聞かせてください。

栗林知絵子さん/WAKUWAKU(以下、栗林):演劇チームの子どもたちが、毎回参加するための準備が一番大変なところなのですが、3年間通じて、親御さんがこういうところに子どもを連れて来ることができなくても、地域の誰かが連絡し合ってつなぐことで、いろんな機会をつくっていけるなあということを感じました。

WAKUWAKUの栗林さん

去年は、演劇は演劇、ダンスはダンスだったところが、今年は、ダンスと演劇が一緒に練習したけど、それも3回だけ。それなのにこんなふうにまとめるなんて、アーティストやスタッフの力があっての舞台だな、ということを今日は感じました。アーティストに出会う機会が無い子どもたちも、この体験が原体験になって、ずっとこれからも、何かを頑張る原動力になるんじゃないかな、と思っています。今後も子どもたちに、こうした課題解決のために活動を継続して欲しいなと思いますが、休眠預金の助成期間は3年間で終わってしまう。でも、この成果をちゃんと伝えて、子ども家庭庁ができるこの機会に、子どもたちが文化に出会うということが、豊島区だけではなく、全国のアーティストが関われるようにするにはどうしたらいいのか、私も考えていきたいと思います。

関わっている子で、「ヤングケアラーなんです、あの子は」と言われている方が、今日お母さんを連れて来て、お母さんに私を紹介して「地域に支えられているんだよ」と伝えてくれ、「これからもよろしくお願いします」というやり取りがあった。お母さんは近くにお住まいじゃないと思うのですが、こういう場があることによって、親同士の出会いや、ここに来ることでつながる人がいるんだな、と。

また、以前この地域に住んでたクリーニング屋さんが子どもたちのことを気かけてくれてたんです。その後、ここを離れて、またこの近くに引っ越して来られたので今日お誘いしたんです。そのクリーニング屋さんは、普段困難を抱える子どもと関わりがない方なのですが、今日感想を聞く時に、女の子がその方を指名したら「ほんとに感動しました」と答えてくれて、今日きっと何か心が動いて帰られたのだなと思うと、子どもの周辺の人たちだけを誘ってしまったが、これを内輪だけじゃなくて、もうちょっと何か見てもらう機会を広げれば良かったな、という反省をしています。

石平晃子さん/WAKUWAKU(以下、石平):私は主に、ダンスチームのネパールの子を引率していますが、日本語がまだまだな子が多いので、言っていることが100%伝わらない中で、やりたい気持ちがあっても連絡が上手くつかないところがあってなかなか大変なこともありました。

WAKUWAKUの石平さん

でも今日ネパールの衣装を着て来た女の子は、学校ではほとんど寝たふりして過ごしているみたいな感じを聞いていて、学習支援に来た時にテスト範囲を聞いても分からないと言って、ワークを出したりもしていないらしいんですね。でも、今日は生き生きとすごく良い表情で、私に「お父さんとお母さんが来てくれるよ」って報告した時の笑顔もすごい笑顔だった。多分、学校の自分はあまりパパママには見せたくないんじゃないかな、と思うんですけれど、今の自分をパパママに見てもらいたいという気持ちの笑顔でした。

別の国から来て、なかなか自分の居場所が無くて、中学生くらいだと学校か家かになることが多いと思うんですけど、こういう地域とつながる場所があったことで、彼女が自分を出して良い場所とか、自分を受け止めてくれて、一緒に過ごしてくれるアーティストの方と出会えたということは、出会いが無かったらある意味殺伐とした中学生活になっていたと思ってしまうので、この出会いがあったか無かったかは、すごく大きなことだと思いました。

だいたいの子が、親御さんが何か文化的なことに参加させようという感じではなかったり、外国籍の方だったりするとそもそも情報を取り行くことが大変なので、彼女彼らの経験の扉が、ここに参加することによって開かせてもらったんじゃないかなと。今すぐには大きな変化はそんなには無いかと思うが、人の成長って何年何十年という感じで根付いたものが形になるというか、自信になるというか、自分を支えるという感じじゃないかな、と自分を振り返っても思うので、明日明後日とか一か月とか一年とか、子どもの成長は長い目で見ないと分かりませんけれど、参加したしないというのは大きな変化じゃないかなって思います。

中西/芸術家と子どもたち:コロナの影響もあって母子生活支援施設では子どもたちを外に連れ出すことができなかったので、音楽チームの子たちとは、施設にお邪魔してワークショップをしてきました。最終回の今日、いきなり他のチームと一緒になって、そういう意味ではみんながちゃんと合わさるんだろうかと少し心配していたんですけど、小川さんから見てどうでしたか。

愛の家の小川さん

小川景也さん/愛の家ファミリーホーム(以下、小川):今年(2022年)の2月からワークショップを始めて、参加した子は割と気持ち的には内向的なお子さんで、今日も行く前に「行きたくない」「緊張する」「行かなきゃだめなの」と話しをするくらいの感じで連れて来たんです。元から音楽に興味があるお子さんたちでしたが、以前にも増して、新しい楽器を覚えたいと明るい希望がいっぱい出てくるようになりました。練習の最後が10月の始めだったので、そこもドキドキして「今日(発表日)はちょっと早く行きましょう」とずっと言っているくらいでした。人見知りな中、たくさんのお子さんたちと今日初めて会って、合わせて一つのものをつくったという経験は、成長の一つとして、貴重な経験をさせていただいたなと思います。

 

■子どもたちがアートにふれる機会について

-子どもたちの支援について、アートなど文化的な活動の意味や必要性、そしてどんな可能性があると考えられるのでしょうか。また、いろんな子どもたちに出会うためには、どんな場づくりが必要なのでしょう。

みんなでアイデアを出して物語を創作

栗林:劇場など、最近は文化に出会う機会を提供したいというお話もいただいて、それは、メールでひとり親家庭とか生活保護家庭、外国にルーツのある方も含めて案内を送るんですね。でも、やはり親がそこに一緒に連れて行って子どもにそういう経験をさせたいなという、自分も一緒に行きたいなと思わない限りつながらない。今回は、池袋本町の周辺でやってくれたから来られる子どもたちというのがたくさんいて、あの子たちが例えば「東京都で募集します」とかだと、なかなか私たちも連れて行くのが難しい。今回のような場だと、ある親御さんに他の子も連れて行ってねとか、そういうことによっていろんな気づきがあると思います。全ての子どもたちが、生まれ育った環境に左右されることなく、いろんな経験をするというのは、小地域でのこういう機会がないと難しいなと思います。

ある子にとっては、様々なご家庭の理由により、ここだけがいろんな人に出会える楽しい場ではあるので、本当にこれがあって良かった。今日は私が迎えに行くのが5分くらい遅れたら、外で「もう来ないと思った!」と待ってて、「早く行くよ!」って言うくらいにすごく楽しみにしてくれていました。

堤/芸術家と子どもたち:芸術家と子どもたちは、様々な家庭環境の子どもたちと出会うために、これまでは学校とか施設とか、アーティストにそこに行ってもらえれば出会えるだろうと思っていたが、学校や施設に所属していないというか、そこではあまり自分を出せないような子には出会えていなかった。それがWAKUWAKUと連携させてもらうことで、施設とは違う、ダイレクトにひとり親家庭の子たちなどとつながれるというのは、我々にとっては貴重な機会です。どうやって出会ったらいいか、我々にはそのルートが無かった。ホールとかに公募で集まる子は、結局関心の高い親御さんの子どもしか集まらない。こういう機会を必要としている子どもたちとどうやって出会うかというのが、我々のテーマというか課題であり、WAKUWAKUに感謝しています。

栗林:今回参加した小学6年生の子は、子ども食堂は多分今お弁当だから来てくれてる。そこで食べるのは多分来ないと思うんですけど、他の所も紹介して一回行ったけれども自分は関心がないとか嫌だとか言っていた子が、演劇は関心があると言って、まさか来てくれると思わなかったんだけど毎回来てくれていました。今日、帰りにお母さんが、「今度舞台など観に行く時は行きたいから教えてください」と言ってたんですよ。自分の子どもが今日は本当に生き生きとしていて、それを見ていたお母さんも「この子こういうのが好きなんだな」って、今度連れて行きたいなって思っただけでも、すごく嬉しいなと思いました。

発表の前にみんなで手を重ねて円陣!

渡辺麻依さん/演出家・俳優(以下、渡辺):彼女は発表が始まる前に、ダンスチームと演劇チームが外で待っている時に、「円陣組まないと!円陣組もう!」と提案してくれて、それで手を伸ばして「おー!」とかしてた。私たちはそのまま始めるつもりだったんですけど、「いいねえ」と言って円陣を組みました。

石平:コロナで地域のイベントがあまり無かったんですけど、もし何かあればWAKUWAKU事務所の近くのお祭りとかで演劇を披露できたら、もっと良いなあと思いました。地域の人にこういう活動を知ってもらって、いろんな子たちが表現活動をやっているということを、わざわざ関心があって申込むとかじゃなくて、その大きなお祭りに行ったついでに見たら「あ、良かった」みたいな、意外な出会いが地域のイベントに参加した時にやってたりすると、知っていただいて見ていただいて、感じていただけたりする。全くWAKUWAKUとつながりがない地域の人たちに、ということがもしできてたら、もっと良かったと思います。子どもたちの自信も、知っている人に見せるのと、知らない人たちの前で演じたりするのって、きっと緊張の度合いも違うけど、自信の付き方とか違って、さらに良い機会になっただろうなと思ったりしました。

 

■アーティストから見た子どもたちの変化

-3年間の中で、子どもたちを頼もしく感じる場面や、いつの間にか仲良くなっている様子も見受けられました。1年目と比べて、3年目はさほど緊張している様子もなく、何となく分かっている空気感がありました。表現する様子とか、子どもたちが関わり合う様子などを見ていて、アーティストの皆さんは何を感じましたか。

1年目、子どもが撮った渡辺さん

渡辺:1年目の緊張と違うんですよ。1年目の緊張は、こっちも緊張しているから尚更それが伝染して、震えるような緊張でした。今日は、控室でも子どもたちが高揚して、テンションが上がっている感じというか、人と人の距離が近かったり、ダンスチームは一曲追加するという打合せが行われてたりとか、ワクワクにつながる緊張だったのかなあ。

中西:一緒にワークショップはやっていたけれど、仲良くなるためにやっていたというより、一つの物語を通して同じ場面に出なきゃいけないし、役割があるから、というようなことを理由にするというか、そうすると、帰りに日本の子とネパールの子が「バイバイ」と声をかけていて、「あ、そこ交流があったんだ」みたいな場面もチラホラ見受けられました。

渡辺: 3年前は、緊張して始まる前に「出るの?出ないの?」みたいなやり取りを幕の後ろでやっていた2人が、今日は堂々とやっていました。一人の子は、リハーサルの時は「早く帰りたい。なぜなら友だちを待たせてるんだ」と来るなり言っていたが、本番が始まったら、「あのさ、3つ目のあの台詞、俺言いたいんだけど良い?」と聞いてきたりとか、私が布を持って舞台を周っていたら、それを無言で「貸して」という感じで、そのまま持って行ったりとか、本番の中でもすごい成長が見えるというか「すごいな、子どもたち」と思いました。大人の方は、リハーサル通りにやろうと割と保身に走るんですけど、子どもたちは「やりたい」ってその場で思って生き生きとやっているのがすごいなと思います。

6年生の男の子はすごく冷静に「それはこうでしょう」とか言って、大人なやり取りができて、一人ひとりすごい成長しています。頼もしかった子はより頼もしくなっているし、緊張して出れないと言っていた子も、すごい頼もしくなっている。今日はほとんど子どもたちに任せたいと思って、やってもらいました。

フラフープをキャッチするワークはそのまま本番のシーンに使われた

私は、ここでしか子どもたちに会えないので、それ以外の生活の大変さが全然分からないから、そういう大変さを知らないで、今「そうなんだ」というお話ばかり聞いて、びっくりしちゃうけれど、ここに毎回来てくれる子、お休みがあってもまた来てやってくれる子、(今年から参加して)今日遅れて入って来た子もどんな感じになるかなとドキドキしてましたけど、「フラフープのところやる?やらない?」と聞いたら、「ちょっとここで見てる」と言いながら、でも端で参加していた。あの子はまた3年やったらきっとそういう成長もあるだろうなあ、と思ったりしました。

あと、今回はダンスチームとどう関わっていくか、妖怪の王様を演じたネパールの子と人間の子たちが出会うところは、演劇とダンスチームが出会っていくというようなイメージもありました。台詞があるけれど、妖怪の王様をよく演じてくれたなあと思うし、あんまりこっちが何かしなくても勝手にいろいろ混ざってくれているような感じもしました。

中西:渡辺さんたちは、学校や劇場でやりたい子たちが集まってくる公募のワークショップもたくさん経験されている。そういう場では、みんな遅刻もしないし、家で練習もしてくる。でも、ここの子たちはなんというか、時間も「あれ、今日来るのかな?来ないのかな?」という感じだったりします。正直やりにくさもあったと思うけれど、他の機会と比べて、今回のような場で感じることは何かありますか。

ワークショップでは渡辺さんも目いっぱい身体を動かす

栗林:そうですね、練習の時の苦労も聞いてみたい。

渡辺:1年目の最初は、自分に対してのショックを受けました。「どうしたら、この時間を上手く使えるようになるんだろう、どうしよう」というショックだったんですけれど、やり方を変えたんですね、きっと。学校とかでやっていたのとは違うやり方で、あの子たちと一緒に楽しめるにはどうしたら良いか、ということを考えてやれるようにしたから、そうしたらやっぱり自分も楽しくなるし、(アーティストとして)やりたいことはもちろんあるけれど、あまりガチガチに固めずに、その場で一緒につくっていくという感じでしょうか。

中西:渡辺さんがつくる台本が、どんどん薄くなってどんどん文字が少なくなっていました。

渡辺:1年目はすごい台本をつくって、「じゃあ読み合わせというものをします」とか言ってやってたけど、そうじゃないんだな、と思いました。もうちょっと子どもたちから、その場で出る言葉とか、その場で伝えたいという思いがやっぱり無いとダメなんだなあと思ったりして、去年は台本を一応大人向けにつくったが、去年の方がもうちょっと「こう言って」みたいな台詞があったかもしれない。でも、もしかしたらそれは、自分が安心するためだったかもしれない、と。そして3年目は、3チームが一緒になるし、もうちょっと自由にというか、その場で生まれてくるものを信じてやってみても良いんじゃないかなと思いました。

声を録音して加工するなど遊んでみる

ワークショップも、演劇チームはあまり最初からは練習しないで、もうちょっと遊ぶ時間というか、作品の中でやることだけじゃない時間も結構多く取りました。いろんな声を録音してみたりとか、いろんなことを遊んだりして、最終的に合体してこうなった感じがします。

中西:ダンスチームも、送って来てくれた石平さんが「これはもう始まってるんですか?」と聞くような雰囲気の中で、子どもたちが揃うタイミングもバラバラだったし、いろいろご苦労おかけしたかなと思いますが、どうでしたか。

酒井直之さん/振付家・ダンサー(以下、酒井):渡辺さん以上に、僕はちゃんと仕切れていないというか、みんながやりたいことをやってくれるのを一緒に楽しむ感じでした。学校とかいろんな場所で決められたことをやることはあるから、ここではそうじゃない時間を持てたらとか、ここに来ることが楽しいと思えることがまず必要だなあと思って、振付やタスク系のことはほとんどやっていない。やりたいものがある人はやるし、こっちからちょっと遊びの延長のような踊りを提案したりするくらい。

2年目、お尻歩きのウォーミングアップをする酒井さん

出来上がったパフォーマンスを見ると、やっぱり音楽チームすごいなとか、あの一音一音の集中具合とか、ああいうのダンスチームもちょっとやりたいなあと思ったりするけど、あのチームでできるかどうかは分からない(笑)。それこそ継続していけば、そういうこともしても良いかもしれないと思いつつ、僕は2年目からなんですけど、2年目3年目は、割とゆるやかな、みんなで場所を共有する時間みたいなことが、練習の時間だったかなあと思っています。

でも途中から演劇チームと合流して、それはすごい良かったなと思います。やっぱり演劇には物語があるし、子どもたちもいつもよりちょっと良い緊張感が入るというか、交流もすごくしていた。国が違うのもあるし、そこがクロスする時間がとても良かったなと思うし、もっともっとあっても良いかもと思いました。

僕の地元でも町を盛り上げようというイベントをやっているが、どうしても移民系の人たちは、その人たちだけで集まってるコミュニティで、なかなか外に出ないし、僕もイベントに呼びたいなと思うし行くと一緒に楽しんでくれるけど、なかなか「この日来てね」と誘っても難しい。でも、「子どもがいる」と言うと来るんだなあと思います。町の中で見る移民の方と、誰かの親としてだと見え方も違うし、関わりやすさにつながっている気がします。子どもを介して、いろんな人がこういう場所で出会えるのがすごい良いなあと思っていました。

渡辺:今マスクもしてるし、「どこまで自分の言ってることが伝わっているんだろう?」ということをダンスチームに対してすごく思っていました。無駄なオーバーリアクションで、ちょっとだけ英語を使ってみたりするんだけど、どこまで伝わっていたんですかね。

言葉じゃなく動きで伝え合うワーク

酒井:伝わってないのが7割くらいじゃないですかね(笑)。いざとなったら周りの空気を読んでやる、みたいなこともあるし、アシスタントが言ったことを、ある男の子に伝えて、それを彼が同時通訳して伝えていました。普通にみんなに向けて喋っているとBGMみたいな感じになります。

渡辺:そうですね。気にしたい子がいっぱいいるから、一人ひとりに「~だよね」「~だね」と語りかけるような感じでした。

(後編へ続く)


学校や児童養護施設など、何かしら枠のある場所で子どもたちと出会うことが多い私たちにとって、今回参加してくれた子どもたちとの出会いは、これまでとはまた少し違った試行錯誤を重ねた3年間になりました。継続して子どもたちと関われたことで築くことができた、人や団体とのつながりは、これからにつながる財産になったと思います。後編でも、アーティスト自身の変化や気づきも伺いながら、これからについて考えます。

記録・編集・写真:NPO法人芸術家と子どもたち
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