保育園の4・5歳児クラスで行われた、城俊彦さん・伊藤知奈美さん(「Co.山田うん」ダンサー)のワークショップをご紹介します。体操や外遊び、鬼ごっこなど、身体を動かすことが大好きな子どもたちなので賑やかな身体表現活動をやってみたい、との先生からのリクエスト。どんどん新しい動きを経験したり、友だちとふれあったり、みんなの前で踊ってみたり、汗だくになりながら一人ひとりのダンスを探す2日間となりました。

1日目、最初は「おはようございます!」の挨拶から。少し緊張した面持ちの子どもたちでしたが、手を上へ伸ばすなど動作もつけながら「おはようございます」を繰り返し、身体をほぐして自然と大きな声が出るようになっていきました。そして、元気よく挨拶をした後は自己紹介。事前に先生には「ガムテープに好きな名前を考えて貼って下さい」とお願いしていたので、ワークショップの間はみんな一人ひとりの「ダンサー名」で呼ばれます。「ひゃくじゅうのおう」「はっぴー」「ぱいなっぷる」「ひこうき」「ぶるーきのこ」など、バラエティ豊かな名前を、一人ひとりアーティストが呼びながらハイタッチ。その度に繰り出されるアーティストの動きにも、子どもたちの活動への期待が高まっていき、動きもどんどん増えていきます。
みんなの名前を呼び終えたら「おはようございます」から「こんにちは」、「よ」、「は」と言葉遊びのように言葉をつなげて、それに合わせた様々な動きを真似します。ほっぺを叩いたり、お尻を叩いたり、「おにぎりの具はなあに?」という質問に「お肉!」「お魚!」と子どもたちが答えれば、それをその場で取り入れて動きにしてしまうアーティスト。いつもとちょっと違う不思議な動きを次々に真似して動いていたら、いつの間にかアーティストとの距離もぐっと縮まっていきました。

たくさんの動きを経験した後は、その場で好きなポーズをいくつか考えて「ピタッ」と静止。ポーズが決まったら音楽スタート!「ドレミの歌」や「幸せなら手をたたこう」など子どもたちにも馴染みのある曲がジャズ風にアレンジされた曲を使い、振付を真似しながら一緒に踊ります。子どもたちは時には歌を口ずさみながら、右へ左へ部屋中をアーティストと一緒にめいっぱい動き回ります。

たくさん身体を踊った後は静かな曲を聞きながら寝転がり、深呼吸や伸びをした後、自分の身体や一緒に踊ってくれた友だち、お部屋にも「ありがとうございました」の挨拶をして1日目を終えました。
2日目は、1日目とは違うダンサー名を考えた子もいたり、「今日は何する?」と聞けば「ダンスの日!」と元気よく答えてくれたり、子どもたちが活動にもアーティストにも慣れている様子が伺えました。早速動きを真似しながら身体を動かし、自由なポーズで止まったら、音楽が始まります。1日目に踊った曲も、2日目に初めて踊る曲も、みんなノリノリで、決まった振りだけでなく自由な部分も混ぜながら踊ってみました。

そして、一通り身体を動かした後は、一人ひとりのダンスの時間です。まずは、アーティストがみんなの前で一人のダンスを披露。「すごい!」「いろんな踊りが踊れるんだ!」「じょこす(アーティストのこの日の名前)頑張って!」など口々に感想や応援を始める子どもたち。アーティストのダンスに目は釘付けです。

そして、アーティストが子どもたちの側に近づいていくと、踊りたい気持ちでいっぱいになった子が一人、また一人と踊り始めます。いきなり一人で踊ることを躊躇う子も、アーティストや友だちの手をとって、自分なりのダンスを小さい身体でしっかりと踊ります。

全員が一通り踊り終わった後「もう一回踊りたい!」という子どもたちの声が。「踊りたい人は踊ります」とアーティストが言えば、あっという間に全員が世界にたった一人のダンサーになり、自分だけのダンスをあちらこちらで踊り始めました。1日目にはあまり活動に参加できなかった子がフッとみんなの中に入って踊っていたり、友だちと手を取り合い二人でダンスを考えていたり、のびやかに花開いた子どもたちの身体から生まれるダンスに心奪われました。
終了後の振り返りでは、5歳児クラスの子どもたちが、4歳児クラスのワークショップ中も「楽しみがなくなっちゃうから覗かない」と子どもたち同士で決めていたというエピソードや、「自由に表現する(動いていみる)面白さを味わえる良い経験になった」という感想をいただきました。
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Co.山田うん/ダンスカンパニー
https://www.children-art.net/co-yamadaun/

先日、日頃お世話になっているボランティアスタッフの方々への感謝のしるしとして、そしてまた、今後ボランティアをしたいと考えている方たちに、当NPOの活動とボランティア業務について、よりよく知っていただくための機会として、交流会とささやかなパーティを開催いたしました。学生の方や、お仕事終わりに駆けつけて下さった方など、年齢も職業も様々な方々が参加して下さいました。
第一部では、当NPOの全体の事業概要や、ボランティアさんにお願いする仕事内容、私たちが大切にしている想いなどを、映像やスライドを交えながら説明しました。実際のワークショップはどんな様子なのかを、実際にボランティアを経験されている方にも、エピソードを交えながらお話ししていただくなど、現場の雰囲気がなるべく伝わるようにしました。また、参加者の方にも自己紹介や、興味のある分野についてお話していただきました。

第二部では、隣の教室に移動してドリンクや軽食を用意して、スタッフに聞きたい事や参加者同士での情報交換など、ざっくばらんにお話して頂けるよう、グリグリという畑活動やえほんの会の写真をスライドショーで流しながら、リラックスした雰囲気で行いました。
ボランティア経験者の方が、現場の雰囲気や子どもたちの様子をより詳しくお話をして下さったり、参加された方が勉強、研究されている事など、いろいろなお話をお伺いすることができ、スタッフにとっても有意義な時間となりました。

事務局スタッフが少人数な事もあり、ボランティアの皆様のご協力があってこそ、活動が継続できることを改めて実感し感謝する一日となりました。
また、パーティーに参加された方で、早速6月から始まる保育園や幼稚園でのワークショップに申し込んで下さった方もいます。この日だけでは分からなかった事、伝わらなかった事など、また現場で皆様にお会いして交流を深めていけることを楽しみにしています!
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※この日も何回かご質問がありましたが、6~7月は幼稚園・保育園が主になり、8月(夏休み)は公共ホールでの舞台作品をつくる公募型ワークショップ、そして9月以降3月まで小学校・中学校(特別支援学級含む)でのワークショップが続く、というのが当NPOでの大まかな一年の流れとなっております。その都度メールマガジンでボランティア募集を行っておりますので、ご興味のある方は下記リンクより是非ご登録ください!
ボランティア募集→https://www.children-art.net/volunteer/

小学4年生61人と取り組んだ、水内貴英さん(美術家)のワークショップをご紹介します。「空間で遊び、楽しくコミュニケーションとりながら形ができていき、クラス全体で空間を大きく使った作品をつくりたい」という先生からのリクエスト。各クラス2日間、実際に作業できる時間は3時間弱という短い時間が課題でしたが、『フォールダウン・オブジェクト~一瞬の作品~』と題して、作品を落下させる事で一瞬だけ成立する作品を制作することになりました。
ワークショップの導入は、アーティストの自己紹介。「変な事を仕事にしています。」と挨拶した後、実際にどんな作品を作っているか作品を見せながら説明します。興味をもった子どもたちから「それ今日作るの?」「すごい!」などあちらこちらで声が聞こえます。アーティストは「つくるのも仕事だけど、思いつかないと作れない。思いつくのが大変。みんなも自分の創造力をいっぱい使って、面白いことを思いついてください。」とメッセージを送り、この日のワークショップの説明へとつなげました。

落下させる作品ということで、空中にくす玉のような装置を設置し、その中に、子どもたちが自由に制作した作品を仕込んで、最終的にはみんなで一斉に落下する瞬間を眺めるという内容です。装置の使い方や、材料の説明をした後は、一斉に作業に取り掛かりました。
子どもたちは、見本で見せたパラシュートや紙飛行機のつくり方をアーティストやスタッフに教わりながら発展させたり、材料からインスピレーションを得てどんどん新たな形を生み出していったり、迷うことなく手を動かし始めます。作ったものは各自自由に装置に仕込んで、実際にどんな風に落下するか試していきます。装置の扱いがなかなか難しいので、自然と何人かのグループになって作業を分担する子もいれば、自分の作りたいものを大切にして、落下させる時だけ手伝ってくれる人を交渉して見つけるなど、様々なやり方で制作を進めます。

スタッフが見ていると、「それは絶対失敗するなあ。」と思うような特大のパラシュートを作り始めた子が。実際に落下させてみると、やはり紐が長くて重すぎるため上手くパラシュートが開きませんでした。しかし、彼はそこで諦めることなく、工夫すべきて点をアーティストと相談しながら再チャレンジ。子どもたちは失敗を重ねる中でどうすれば成功するのか、装置はどのように使えば良いのか、次々に学んでいっている様子でした。そうしているうちに時間はあっという間に過ぎ、納得できる結果が得られたグループもそうでないグループも一旦作業を終了。次回への期待を胸に挨拶をして学校を後にしました。

そして一週間後、2回目のワークショップは、装置の数を全員分に増やし、最後には一斉に落下させる時間を設けることを説明して作業に取り掛かりました。体育館に入って来た時からヒソヒソと何やら作戦を立てて話を聞くより作業をしたい気持ちが溢れていた子どもたち。この日も迷うことなく作業に取り掛かり、1回目とは違う事に挑戦したり、前回の内容をさらに工夫して発展させたりしがら、黙々と作業に入っていきました。

どんな風に見えるか何回も試してみたり、扱う素材を増やしてみたり、途中で糸が絡まったり装置が引っかかったりするなどのトラブルもちらほら見かけますが、大人も協力しながら、限られた時間の中でも力を尽くします。装置自体にも飾りを付け始める子や、垂れ幕のようなものを作ってメッセージを描いているグループ、プレゼントのようにラッピングする子など、様々な工夫が増えていきました。

そして最後は、いよいよ列毎に同時に落下させます。装置の準備を揃えるだけでも時間がかかりましたが、「私が持っていようか?」「ひっぱるのやっていいよ。」などお互いに協力し合いながら何とか設置完了。「5、4、3、2、1!」のカウントダウンで一斉に落下です!本当にほんの一瞬でしたが、キラキラした陽射しの中をフワフワと舞い散る作品に子どもたちからも歓声が。終わりの挨拶では「自分にしかできないことを考える。誰の真似もできなくなった時に、何もないところから考える。そういう事を思い出してくれたら嬉しいです。」とアーティスト。たくさんの創造力を秘めた子どもたちだったので、これからも面白くて楽しいことでいっぱいの毎日をつくってくれるといいなと思いました。
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水内貴英/美術家
https://www.children-art.net/mizuuchi_takahide/

小学校の特別支援学級で取り組んだ、上村なおかさん(ダンサー・振付家)によるワークショップをご紹介します。昨年度は美術家のアーティストとワークショップを実施した学校ですが、「ゲストが来て何か楽しいことをしてくれた」という体験を継続していきたい、という先生からのリクエスト。今年はダンスや音楽を使って自由にのびのびと表現活動を楽しめるようにということで、友だちと関わったり、普段動かしてない動きを経験したりするような内容に取り組むことになりました。アシスタントにはダンサーの戸川悠野さんをお迎えして、3日間実施した中から2~3日目の様子をお伝えします。

まずは2日目。ワークショップの始まりは身体をほぐすところから。足の先をマッサージしたり、肘、お腹、と身体の部分を一つずつ触ったりつまんだりして感触を確かめ、色々な触り方で自分の身体を労わるようにしてくまなく全身にふれました。続いては二人組のワーク。一人が寝転んで、もう一人が手を差し出した所へ順に足を伸ばして触れていきます。アーティストが見本を見せた後に早速やってみると、上下左右あちらこちらへ差し出される手によって、様々な身体の形が生まれると同時に、相手が届かない所へは差し出さないという自然な優しさも見られました。そうしてだいぶ身体がほぐれたら、次はタンバリンの音に合わせて「シャラララ」と鳴っている時は動いて移動、「パン!」の合図でピタッと静止するワークへ。移動はただの移動ではなく、アシスタントの方へ向かって好きな動きを考えながら進みます。6年生の男の子がスーパースローでゆっくりゆっくり時間をかけて歩く様をアーティストが取り上げ、みんなでその足の動きを観察しました。止まる時は相手にそっと触れて止まります。相手が痛くないように、自分の身体が気持ち良いようにしながら、ゆっくり動く難しさも感じて身体の感覚が開かれていくようでした。
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その後は、教室に青と黄色のビニールテープを交互に一直線に貼り、その上を一人ずつ歩きました。青はゆっくり、黄色は速く、また青になったらゆっくり歩きます。速い遅いも一人ずつ違ったスピードがあります。あっという間に端までたどり着く子、じっくりじっくり少しずつ歩を進める子など、一人ひとりの違いをアーティストが認めながら、息を呑むような静かなソロダンスが続きました。最後には、ビニールテープをあちこちに貼って、音楽をかけながら自由にテープとテープの間を移動、色のルールはそのままに全員で踊る時間です。細いテープの上に同時に何人か集まってギュウギュウになる時もありますが上手く譲り合ったり関わり合ったりして、最後の最後は「今日の形!」でポーズを決めて終えました。
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最終回となる3日目は場所を変えて体育館での実施。校庭に雪の残る寒い日でしたが、広々とした環境の中でたくさん身体を動かす事ができました。最初の身体ほぐしは、お尻だけ床に付けてクルクルと回ったり、全身をブラブラさせてジャンプをしたり、足を開いたり閉じたり、これまでと同じように丁寧に自分の身体に向き合っていきます。続いては、差し込む陽の光を利用して、日向を海に見立てて魚になって動いてみました。アーティストがトーンチャイムを鳴らしながら「いろんな泳ぎ方考えていいよ」と言えば、「ホオジロザメになる」など口々に言いながら、床は冷たいのにニコニコと嬉しそうにそれぞれのイメージを広げていました。
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その後は、体育館に元からある色の線を利用してのワークです。子どもたちにもアイデアを聞いて、赤は「クルクル回る」、白は「滑る」、青は「ブルーなのでブルブル(学校でダジャレが盛んな事を発見したアーティストのアイデア)」、黄色は「カチンコチンで形を決めて止まる」、緑は「ゆっくりと森の生き物になって動く」というルールを一色ずつ確認しながら取り組みました。もちろん全てのルールをアーティストが指定する事もできましたが、この日の子どもたちの様子を見てアイデアを出してもらう事に。結果的に自分たちが決めたルールということも、取り組みへの意欲を高めたようでした。
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アーティストは、色ごとにタンバリン、鈴、マラカス、トライアングル、トーンチャイムと楽器でその場で音を付けながら、面白い動きを認めたり一緒に動いてみたり、子どもたちの表現を広げる環境を作っていきました。子どもたちは色ごとに違う動きにもしっかり反応して、線の上で渋滞になっても喧嘩したりはせずすっと避けたり、出会った友だちと一緒に動いてみたり、様々な関係性も垣間見えました。

その後は一人のダンスの時間。体育館の真ん中を端から端まで「途中にあるポール立ての銀色の蓋の上はジャンプして、それ以外は自由!」と説明してスタート。やりたい子が次々に手を挙げました。かなりの距離ですが、堂々と前を見つめ床を見つめ、くるくると、しっとりと、軽快に、そして時に戸惑いながら一人ひとりのダンスを披露、順番を待つ子どもたちも静かに見守ります。全員が終わってもまだ踊り足りない様子で、「2回目も良いよ」とアーティストから声がかかると、一人ずつではなく次々と前へ進み、そのまま全員でのダンスへ突入。再び一通り色の動きをした後は、一曲分の自由ダンス。広いと思った体育館が狭く感じる程、子どもたちの身体が空間を清々しく埋めていきのびやかに表現する姿に見とれているうち、あっと言う間に終了の時間となりました。
最後の振り返りでは、「見所がちょこちょこあって、みんな音の変化も良く聞いていた。視聴覚室で実施した前回までの経験が残っていて、体育館へと場所が広くなったことで、みんなの中でも表現が広がっていた」とアーティスト。先生からは、「普段ダンスというと運動会行事など決まった動きのものになり、そうすると“できない”“他の子と一緒の動きにならない”などとなってしまうが、ワークショップを通して創作する楽しみを学ぶことができたと思う」との感想をいただきました。毎回先生たちもワークショップに一緒に参加して下さって、子どもたちの変化を丁寧に拾いながら細やかにサポートしていただけた事も、子どもたちがのびのびと安心して表現出来るあたたかい環境につながっていて、子どもたちや先生との再会ができたことを心から嬉しく思いました。
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上村なおか/ダンサー・振付家
https://www.children-art.net/uemura_naoka/

2学期は、学芸会や音楽会などの行事に関わるワークショップの依頼も多くなります。その中で、学習発表会に向けて『ユタと不思議な仲間たち』という物語に取り組んだ、小学5年生57人とのワークショップを紹介します。東京育ちのユタが両親を亡くして東北の学校へ転校。座敷童との出会いによってたくましく成長していくお話です。
アーティストは、通称「なにわのコレオグラファーしげやん」こと、北村成美さん(振付家・ダンサー)。今回は、発表日を含めて全6日間しかないので、台詞の指導などは先生が担当、アーティストは身体表現を取り入れた、オープニング、座敷童が自己紹介をする場面、座敷童とユタが乾杯する場面、そして最後に座敷童が旅立ち「友達はいいもんだ」を歌うエンディングの4つのシーンを主に担当することになりました。
さて、初日は「全員の顔が見えて、全員に顔を見せられる場所に3秒で移動してください。答えを人に言わない。」と、いきなりアーティストの問題から始まりました。「1、2、3!」の掛け声で、戸惑いながらも一応正解と思う場所へ移動する子どもたち。最初はみんな舞台に上がってしまい、「それみんなの顔見えてる?」とアーティストは一蹴。「1、2、3!」とできるまでやり直します。そのうち、子どもの中から「円になったらいいんじゃない?」という囁き声が。次第に円が出来てきたところで、「みんなの顔が見えてるなら合図なしで出来るはず。」と、無言でタイミングを合わせて移動、アーティストへの集中力、呼吸がぐっと一点に集まっていきました。
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円が形になってきたところで、そのまま無言でアーティストがいろいろな動きを始めると、アーティストを見つめていた子どもたちが何も言わずにその真似を始めます。床を叩いたり、回転したり、寝そべったり、時に「シュッ」「ハッ」と声も出しながら、様々な動きを真似します。
そうして開始から30分ほどたった頃、真似の動きの流れで正座をして、呼吸を合わせて「よろしくお願いします!!」と挨拶したところで、改めてアーティストが自己紹介と説明をしました。これからのワークショップについて「みなさんに対してもプロと同じようにやります。ただちょっと根気がない。」と叱咤。改めて真似の動きをしてもらい、アーティストの動きを見てから真似をすると、動きにズレが生じることを気づかせます。では、「見る」とはどういうことか。おもむろに男の子を円の中心に連れ出し即興で踊るアーティスト。踊り終えると「分かった?」「ハイ、二人か三人でどうぞ!」と全員に向かって投げかけます。二人組で何をするか言葉での説明は一切ないので「えっ?」と言いながらも、相手を見つけて何やら動き出す子どもたち。対面するという関係性、気分を合わせる、ということを体験するため、何パターンか二人組の動きを繰り返し「これは遊びじゃないねん。全身で見るからお客さんも見る。」と語りかけると、アーティストが見本を見せる時の子どもの静けさも増していきました。言葉で説明するのではなく、見つめる、呼吸を合わせる、感じる、など身体全部を使っての対話が生まれていたように思います。
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2日目、この日は「よろしくお願いします!」の一言の後は、何も説明せずに、真似の動きから始まりました。子どもたちは既に慣れた様子で、水泳の動き、お尻歩き、何かを投げる動作など、アーティストと呼吸を合わせて動きます。
そして、またみんなの顔が見えるよう円になったところで、これからは学芸会に使う動きをつくっていく事を伝え、オープニングや座敷童の自己紹介にも使う「名前ダンス」の創作に取り掛かりました。四人組になり、一人ひとりの名前を全員でも踊れるようにと指示を出したら早速スタート。どんどんアイデアが出て何個も振りを考える子、1つのアイデアに辿り着くのにも時間がかかる子、様々なグループがありますが、時折1つのグループを取り上げてポイントを全員に伝えながら創作を進めます。一人の名前でも4人で手をつなぐなど協力して動きを作っているグループ、好きなスポーツの動きを取り入れるグループ、掛け声に工夫をするグループなど様々。更に、4人の名前を続けてテンポよく踊れるように「せーの」という掛け声をなくす事、「大事なのは終わりと始まりがあること。終わったらちゃんと止まる!」など精度を上げるよう各グループを回って声掛けをしました。
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そして振りが決まったら、1グループずつ発表です。少しでも終わりのポーズが決まらないと「何やってんの!?」、服を気にして触ってしまうと「振付にないことはやらんといて!」、その他にも「私プロやし、こんなん許されへん!」「面白くないもの作るんやったら、やらん方がいい!」等々、アーティストから激が飛びます。どんどん子どもに詰め寄り、一つ一つの動きに納得できるまで、一切の妥協を許さず何度も何度もやり直してもらいます。すると、見ている子どもたちも発表の後に拍手をするべきかどうか判断するようになりました。拍手をもらえないのは何故か、拍手したい気持ちになるような動きとはどういう事かを身体で感じ取ったようで、最後に全員で一斉に名前ダンスを踊った様子は壮観でした。何を見せたくて、何を見せたくないのか、この日の振り返りで先生が仰った通り「前回までは「楽しい時間」だったのが、「発表して見せる。」という意識に変わった。」という2日目でした。
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そして配役も決まり、ひな壇など舞台も設えられた3~4日目は、名前ダンスを取り入れたオープニングや、初回の真似の動きを使った乾杯のシーンなど、どんどん動きを決めていきました。お話の中で57人全員が一度に登場することは難しく、登場人物は4場面に振り分けて配役が決められていますが、全員が登場して一人ひとりが考えた自分の名前ダンスで始まるオープニングは、これからどんな物語が始まるのか、見る人の期待を煽ります。
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乾杯のシーンでも、場面の登場人物以外のひな壇で待機している子どもたちも登場して、タイコに合わせて掛け声をかけたり全員で踊ったりする工夫をしました。乾杯のしぐさ一つとっても、中途半端な飲み方では伝わらない。そこに無いものをあるように見せられるように、アーティストも実際に違いをやって見せながら、一つ一つ丁寧に伝えていきました。
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途中、ワークショップがない期間は先生に練習を任せて、あっという間に迎えた5日目はリハーサル。リハーサル直前の控室では、アーティスト自身も舞台に立つ前にするという儀式を子どもたちと行いました。「舞台に立つと自分一人やけど、みんなに見られたりするやんか。でも、お客さんに伝える時も、お互いに向かい合ってきちんと挨拶することと同じ。」と、全員がお互いに一人ひとりと握手をしてリハーサルに臨みました。
そしてリハーサル後、教室に戻った後は本番に向けてさらに完成度を上げる時間。「せっかくここまでやってんから、もっとよくなる!」というアーティストの言葉に、「もっと進化させる。」という子どものつぶやき。「一人くらい大丈夫。」と思っている人が一人でもいたら台無しになるからと、オープニングの名前ダンスを、改めて一グループずつやってもらいました。出来ていなければすかさず、「声も何もかも小さい!」「何も伝えてへん!!」「一番大きい声出してみて!」とアーティスト。自分の番ではないグループの子も、お互いに顔を見合わせて自分たちの動きについて本当に大丈夫か確認を始めます。そして、ある子が何度も何度もやり直しをさせられていると、いつの間にか周りがその子の動きを覚えて動き出しました。
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一人を囲んで全員がその子の名前を呼び、その子の動きをやってみる。アーティストが声をかけたわけでもないのに、自然に動き出した子どもたち。何度も何十回も、自分の名前に加えて友だちの名前、いくつものダンスを繰り返していると一つ一つは一瞬の動きなのに、いつの間にか袖を捲りあげ、肩で「ハアハア」と息をする子どもたち。みんなの熱気、そして気持ちが教室中に満ちていきました。更に、終わりのポーズが中途半端な子には、周りからも「ちゃんと止まった方が良い。」とアドバイスや、「しゃがんでみたら?」などポーズを提案する姿も見られるように。次のグループへ進もうとすると自ら挙手して見て欲しいとアピールし、アーティストの気合いに全く引くことなく応えていく子どもたち。何回も繰り返すうちに動きは良くなりましたが、「お客さんには一発目でこれができなあかん!」とアーティスト。結局一時間弱を名前ダンスに費やしましたが、その中で伝えたことが全てにつながっている気がしました。
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そして、後は子どもたちがやりきってくれる事を信じるのみ、と迎えた発表の日。児童鑑賞日と保護者鑑賞日の2回の発表のうち、アーティストが来られるのは一回目だけ。出会ってから約一ヶ月、振り返れば初めはアーティストの言葉に全く反応しない子がいたり、気がかりな事もありました。でも、ここまで子どもたちも先生も一丸となって迎えた本番。様々な想いを胸に始まったオープニングから最後まで、一瞬一瞬、一人ひとりが舞台の上で楽しんでいる様子、緊張している様子、そして観客が物語の世界に引き込まれ会場の空気が変わったことを感じました。しかし、ここまで一緒にやってきたみんなだからこそ、「もっとできるばず。」と、発表後にはアーティストから2回目の発表に向けて最終チェック。今まで、どんな事にも一瞬で応えてくれたからこそ、どこまでも登っていけそうな気がする子どもたちの勇姿に胸が熱くなりました。
校長先生が会の始まりの挨拶で、「お客さんが、劇を観る前と観終わった後では世界が違って見えるような劇を。」と仰っていましたが、スタッフも毎回子どもたちの姿に驚き感動し、この出会いによって世界が違って見えたような気がした6日間。このような出会いをくれた、子どもたち、先生、そしてアーティストへの感謝の気持ちでいっぱいです。
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北村成美/振付家・ダンサー
https://www.children-art.net/kitamura_shigemi/

小学校の特別支援学級で行われた、音楽家の港大尋さんによるワークショップをご紹介します。昨年度も同じアーティストでワークショップを実施した学校で、今年は「港さんと、とにかく音楽と身体を自由に動かすことを楽しみたい。」という先生からのリクエスト。子どもたちの中に去年のことが何らかの形で残っているようなので、同じアーティストで継続して取り組む方が、安心してより面白い表現が引き出せるのでは、という先生の言葉もあり、同じアーティストにお願いする事になりました。アシスタントにはダンサーの渋谷陽菜さんをお迎えして、3日間のワークショップを実施しました。

ワークショップ初日、子どもたちとの久しぶりの再会。まずは、低学年グループでの実施です。去年と変わらない笑顔を見せてくれる子もいれば、1年生など初めましての子どもたちもいるので、まずはご挨拶。アーティストが「覚えてる?」と聞くと「覚えてな~い!」と返事をした子も、アーティストがジャンベ(アフリカの太鼓)を叩き出すと手拍子をしたり、自分たちも叩きたがったり、去年も聞いたリズムや音にすんなり反応していきました。
一人ずつ叩きながら、真ん中と端を叩く時の音の違いを使って簡単なリズムを叩いていると、ある男の子が、ジャンベを持ち上げた底は空洞になっていて、そこに風が発生することを発見。穴に顔を近づけて風を感じて確認し始める子も出てきました。
そうしてジャンベに慣れた後は、リズムに合わせて身体を動かしていきます。途中、ジャンベの音にあわせてダンサーが即興の踊りを見せました。教室を暗くして、まるでジャングルのような雰囲気の中で踊ります。何に見えたか聞いてみると「ライオン」「蛇」「オオカミ」「宇宙人」「アナコンダ」など、様々な生き物に見えた様子。じゃあ、みんなも一緒に踊ろうということで、ジャンベの音を聞きながら、時にダンサーの真似もしつつ、一人ひとりが即興でいろいろな動物になって踊りました。
一方高学年グループでは、ジャンベで一人一人にリズムを考えてもらうことにも挑戦。「トントントン」「タンタタタンタン」「カカカカカカカ」「タンタタタタタンタン」など、みんなで真似してジャンベを叩いたり言葉にもしたりしました。さらには、出てきたリズムにあわせて即興の動きをつけながらダンスをしました。昨年もジャンベを叩いたりダンスを踊ったりした仲間なので、アーティストがどういう事をするか、お互いの勝手がなんとなく分かっている事や、子どもたちの期待度の高さを感じた1日目でした。

2日目と3日目は、昨年度の経験があってこその子どもたちの反応の良さや、ワークショップへの期待も踏まえて、いくつかの歌や踊りに取り組み、最後には、低学年と高学年で一緒に発表する時間を設けるという計画で臨みました。高学年グループと一緒に取り組んだのは、アーティストの港さん自身による作詞作曲の『がやがやのうた』と、喜納昌吉氏の作詞・作曲の『花』。どちらの曲も歌いやすい歌詞やメロディーで、何回か歌っていると自然に子どもたちの声も大きくなっていきます。ピアノを弾くアーティストの側にくっついていたり、ジャンベを曲に合わせて叩く子もいたり、それぞれの参加の仕方を受け止めつつ、時には歌詞を読みながら言葉の意味も確認していきました。『花』の間奏部分で一人ひとりがソロで踊るシーンを入れたり、「川はどこに行くの?」と問いかけながらイメージを広げて子どもたちにアイデアを出してもらって振付を考えたりしました。

一方、低学年グループは『がやがやのうた』と早口言葉&ダンスに取り組みました。「はらっぱでラッパをふいた」「はらっぱで立派なラッパをふいた」「カッパがはらっぱで立派なラッパをふいた」と少しずつ単語を増やして文章を長くしていきながら、身体の動きもつけていきました。どんどんどんどん言葉が増えて文章が長くなりますが、「もうちょっと足していい?」と聞けば「いいよ!」と答える子どもたち。カッパの動きを考えていたら、動物博士と呼ばれる男の子がカッパの生態について教えてくれるなど、話も弾む中で踊りも組立ていきました。そして最終日には発表することを伝え、歌や早口言葉を少し練習してもらうようお願いして2日目のワークショップを終えました。

そして迎えた最終日。それぞれが発表する歌や早口言葉を何回か練習してからお互いに鑑賞です。直前には、アーティストと円陣を組んで先生にも秘密の作戦会議。ワークショップでやった事に更にひと工夫を加えて発表しました。高学年だけが取り組んだ『花』のサビ部分をみんなで一緒に歌ったり、低学年だけが取り組んだ早口言葉を高学年にも教えてあげたり、お互いが経験した時間を共有して、最後は『がやがやのうた』を全員で歌い踊りました。先生もギターで参加したり一緒に踊ったり、一人一人のバラバラが、音楽の中で心地よく混ざり合い、温かい時間となりました。


最後の振り返りでは、「踊りたい人?と聞いた時に何の表情も変えずにサッと手を挙げて踊ることができる。そういう反応が今の世の中に欠けているんじゃないか。音楽があって通じ合った瞬間だった。」とアーティスト。昨年の経験もあったからなのか、今回は去年以上に、アーティストの「歌ってみよう。」「踊ってみよう。」という投げかけに対する迷いのない反応の良さに驚かされましたが、音楽やダンスを通してのコミュニケーションが、子どもたちの持っている様々な表現を色とりどりに引き出していたのだと思います。
また、先生からは、アーティストの言葉かけが「座りなさい。」ではなく、「座っちゃおうか。」など肩の力の抜けた雰囲気でとても良く、指示がなくても子どもたちは「港さんと動いていると何となく楽しいことがある」というのを分かっている、という感想をいただきました。ピアノを弾けなくなるくらい日に日にアーティストに接近するなど、目に見える距離の近さもありましたが、そうした関係性の中でお互いに気持ちよく表現を分かち合うことができたような気がして、幸せな気持ちで学校を後にしました。
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港大尋/音楽家
https://www.children-art.net/minato_ohiro/

小学校の特別支援学級で行われた、美術家の中津川浩章さんによるワークショップをご紹介します。普段は個人製作が多いので共同制作に取り組んでみたい、活動の中で「これ僕の!」と自信を持って表現してほしい、という先生からのリクエスト。一つの教室を丸ごと制作スペースに変えて、20人の子どもたちと2日間のワークショップを実施しました。

部屋に入ると用意されていたのは3m×3mの大きな画用紙。まずは紙の周りにみんなで座って、中津川さんからの説明を聞きます。絵具を使っていろんな絵を描くことを説明した後は、早速絵具をみんなに配ります。用意したのは発色の良いポスターカラー。黒以外の色を薄めに溶いて、手ごろな大きさの入れ物にいれ、一人一色と、好きな大きさの筆を選びます。色を選ぶにも、同じ色だけを使う子やいろんな色を試してみる子など、一人一人の好みが現れます。
そして、いよいよ制作スタートです。最初は一人ずつ、画用紙の上に乗って「まっすぐな線」を描きました。短い線や、画用紙の端まで続く長い線、四角になる線など様々な色と味を持った線が描かれていきます。子どもたちの「描きたい!」という気持ちもどんどん高まり、二人ずつ、四人ずつ、と描く人数も増やしていきました。薄く溶いてあるので、お互いの線が重なったり交わったりした部分も、綺麗な色の重なりを見ることができます。

最終的には全員で画用紙の上に乗り、中津川さんから注文の出るいろいろな種類の線や点、円などを描いている内に、子どもたちの心も次第に開いていくのか、一人一人の自由な線が広がりを見せるようになります。

そして一通り画面が色で埋め尽くされた後は、一度スポンジで水分を拭き取り、その上から、濃く溶いたポスターカラーを使って描いていきました。動物に乗り物、一人一人の好きなものも見えてくる瞬間です。具体物だけでなく、しずくを飛ばしたり、いろんな色の塗り方も試みたりしているうちに、ポスターカラーもどんどんなくなり、あっと言う間に作品が完成しました。

完成した後は、2日目に向けてそのまま乾かします。今回は途中から紫が大人気になり、海や宇宙をイメージさせるような作品になったかと思いきや、乾いてみるとまた違った表情になり、筆の跡やドリッピングの跡が見えるようになり、たくさんの小さな世界がギュッと詰まった大きな作品になっていました。
そして、土日を挟んでの2日目のワークショップ。今日は何をやるのか待ちきれない様子の子どもたちに、何をするのか説明します。「みんなで動物ワールドを作ろう」というテーマのもと、まずはどんな動物を知っているかを聞いてみました。ライオン、ヘビ、ウシ、ペンギン、ゴリラ、コンドル、キツネ、ゾウなど次々に動物が出てきます。
しかし、「じゃあその動物たちを、1日目に描いた絵から切り出してみよう。」という説明には、「難しい!」という声も。アーティストは「正確じゃなくてもいいよ。こんな動物いたらいいな、という動物でもいいし、動物が生きていくのに必要な木や水も作っていいよ。」と話していきます。さらに、「鳥とか作るのに、羽と胴体バラバラに作っていい?」「間違えたら違うの作ってもいい?」「誰かと一緒に作ってもいい?」などどんどん質問が出てきて、それに答えるたび、子どもたちもどんな風に作るかイメージを持てた様子でした。そして、「失敗したら?」という質問には、「失敗はないです。失敗したら、またそれをどうしたら素敵になるか考えるのも楽しいと思わない?」というアーティストの答え。作品のうまい下手を気にしてしまう子どももいるらしいですが、「失敗していい」と言ってもらえた事で、楽しんで制作に取り組めたと先生から終わった後に教えてもらいました。
見本を見せずに言葉だけの説明ではちょっと難しいと思うことも、アーティストの声掛けや、一人一人の表現をそのまま受け止めるという雰囲気を作ることで、安心して制作に取り組める環境を整えることがとても大切だと思いました。

さてさて、質問が終わったら早速画面を切り取りに行きました。最初はグループの代表が大きめの画面を切ってみんなに配っていましたが、だんだん慣れてくると、みんなそれぞれに好きな分だけ好きな形で切り取っていきます。ペンギンにコンドル、ネズミにアザラシなど、思い思いに動物を切り貼りしていきます。大きなゾウを作った子は、「飼育員さんも!」とゾウの鼻に人を乗せていました。そのうち、アンコウや潮を吹いているクジラも登場、緑の部分を切り取っていたら「カエルになっちゃった!」と偶然できた形も楽しみつつ、真っ白だった画面が、様々な生き物の暮らす素敵な世界に生まれ変わりました。

1時間ほど制作に取り組んだ後は、一度みんなの作品を鑑賞して、自分の作品の事や、友どもたちの作品の良かったところなど、感想を聞かせてもらいました。
実施後の先生のアンケートでは、「ダイナミックに表現する楽しさ、描きながらいろんな色が混ざっていくおもしろさを味わうことができた。」「一人一枚の画用紙に向かうのではなく、大勢で大きな作品をつくる体験ができた。」などの感想をいただきました。

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中津川浩章/美術家
https://www.children-art.net/nakatsugawa_hiroaki/

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「ダイナミックな造形を子どもたちに体験させたい」という要望を幼稚園より受けて、美術家・山添joseph勇さんによる造形ワークショップが開催されました。全2日間行われたワークショップの2日目、5歳クラスの様子をレポートします。
朝9時半。園のホールに集まった子どもたちは14人。お休みの子がいたので、ちょっと少なめです。ホールには大きなケースにびっしりつまったたくさんのせんたくばさみ。そして大きなモニターには、色々な形をした、色とりどりのせんたくばさみが次々に映し出されていています。
「おはようございます」と話を切り出した山添さん。「今日は何も用意していないけど、せんたくばさみをたくさん持ってきました。何かを作らなくてもいいので(壁面状の空間に)くっつけたり、服や体につけたりして遊んでみてください」
それだけ子どもたちに伝えると、まず5分くらい、モニターに映し出したせんたくばさみを眺めていてもらいました。普段見慣れているせんたくばさみのはずなのに、形も色も、こんなに色々あることに子どもたちは早くも気づいた様子。「これはフランスのだよ」と山添さんが言うと「えーー?!」と驚きの声。今日は面白いことになりそうと、子どもたちも予感がしたようです。
「じゃあはじめよう」という一声で子どもたちは一斉にせんたくばさみの周りへ集まりました。赤、白、黄色、みどり、ピンク、青、半透明のものなどだいたいの色ごとにわかれていますがそれぞれの色のなかにも微妙な色違いがあるので、全部で200色くらいあるとのこと。奥の深い色彩と、多種多様な形の洪水には、圧倒されるインパクトがあります。子どもたちは、さっそく手にとってつなげてみたり、服や髪の毛につけてみたり、壁面のように無色透明のビニールを張った空間に挟んで遊んだり、大中小のサイズがそろったせんたくばさみを家族に見立てて、即興で物語を語ってみたり、自分一人の空間をとって、ひたすら何かをつくろうとしたり。本当に色々なことをして遊びはじめました。どうしたらいいかわからなくてぼーっとしちゃう子は一人もいなくて、みんなどんどん手を動かしてはせんたくばさみで何かしようとしているのが気持ちいいくらいでした。
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せんたくばさみという、つなげるのも切り離すのも、子どもが簡単に扱うことのできる非常にシンプルなツールゆえ、広がりは無限で、時間の経過とともに変わりゆく子どもたちのせんたくばさみとの関わり方は見ていてとても興味深いものがありました。個人の作業がグループ作業に変わったり、一度やりきったものを全部壊してまったく違う新しいものを創りだそうとしたり、個人の作業が終わったからと、友だちのためにせんたくばさみを集める作業をすることにしたり、どこまでもひたすらつなぎ続けていたり・・・。山添さんが「あと10分くらいで片付けの時間だよ」というまでは、この遊びはエンドレスに続くのではないかと思われるほど、子どもたちは夢中になってせんたくばさみと向き合っていました。
最後は、作ったものも、つなげたものも全部崩し、あちこちに散らばったせんたくばさみをかき集めて、色ごとに元のケースに納めておしまいとなりました。作っていく作業と片付ける作業は、目的も意味も異なるものですが、色の美しさのせいか、どちらもとても創造的な作業に感じたのは私だけでしょうか。
ワークショップに参加した先生たちも、せんたくばさみの奥深さを実感してくれて、これからは園の遊びに取り入れたいと前向きな感想をいただくことができました。
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山添 joseph 勇(美術家・深沢アート研究所代表)
https://www.children-art.net/yamazoe_joseph_isamu/
★せんたくばさみ会議 https://pegs.exblog.jp/

保育園の4歳児クラスで行われた、グラフィックデザイナーの種市一寛さん&宮添浩司さんによるユニット「バレ・バレ」のワークショップをご紹介します。アーティストの方が提案してくれることはいつも刺激になるので、こういった機会を楽しみにしているし、作ることが多少苦手な子も思いっきり楽しんで、今後の制作へつなげていけるような活動を、という先生からのリクエスト。会場は保育室で、いつもの部屋をまるごと海の中に作り変えてのワークショップとなりました。

まずは、ホールで子どもたちと出会います。挨拶の後は海の絵本を見せながらの導入。見た事のある魚の名前などを口々に話し出す子どもたちに、「これからみんなで海に探検に行きたい人?」と尋ねると、「行く!」と元気に答える子や、「ちょっと怖い」と答える子も。そこで、海に行くために「魔法のスーツ」を装着します。ポリ袋で出来たスーツですが、子どもたちのワクワク感が高まって、そのまま海の中(保育室)へと出発です!
最初の数秒はソーッと部屋に入る子どもたち。でも入ってしまえばもう気持ちを押さえずに、てんこ盛りになったすずらんテープの山に埋もれたり、壁に貼られた魚たちや天井のネットなどに触ったり「ワーワーキャーキャー」大興奮の子どもたちに、大人も笑いが止まりません。

そうして空間自体を満喫したところで、アーティストが一つだけ吊るされた魚に注目。「1匹だけだと淋しいよね。お友だち作ろうか?」と問いかけて、制作の時間に突入しました。まずは、丸や三角に切られた3色ほどの画用紙を使って魚の形を作ります。色の選び方や組み合わせ方で一人ひとり違った魚が登場します。

一通り形が出来た所で、「お魚さんにお洋服を着せてあげよう。」と、飾り付けに使う様々な素材(マスキングテープ、シール、毛糸など)を紹介します。材料が登場するとまた子どもたちの興味も深まり、材料の箱に群がりながら、それぞれ自分が使ってみたい素材を持っていきます。マスキングテープは、ハサミで切るのが難しい素材でもありますが、何回も繰り返すうちに、なんとかかんとか切れるようにもなり、この1日だけでもまた子どもたちの成長を感じました。

材料だけでなく、イカやタコなど、アーティストが作った別の見本なども時々見せながら、子どもたちのイメージを少しずつ刺激して制作は進みます。一つ完成するごとに天井から吊るして飾るのですが、大人を見つけては自分の作品がどこにあるか教えてくれる子もいて、誰かに自分の作品を見てもらうことの大切さも改めて感じました。

次々に作品を持ってくる子どもたちに、天井に吊るす作業が追い付かずスタッフもてんやわんやですが、予想以上に4個5個と作り続けても途切れない子どもたちの集中力には感心しきりです。
時間が経つと、材料が増える面白さと同時に、同じ素材でもいろいろな使い方が生まれてきます。形の紙を長~くつなげたり、リボンを長くつかって垂らすようにしてみたり、魚だけじゃなく、お魚さんの家なども加わりました。紙コップなどの立体的な素材も加わると、海はますます豊かになっていきます。


制作が終盤に差し掛かった頃には、「魔法のシール」を少しずつ子どもたちに渡しておきます。そうして60分程が経過したところで、保育室の電気を半分消灯。何事かと思っている子どもたちに、海が夜になるからと片付けの声かけをします。そして一度全員で座ったら、アーティストから魔法の呪文が。「海さん、おやすみなさい。」とみんなで一緒に唱えると、そこはもう夜の海!実は、魔法のシールや、最初からいた魚たちには畜光塗料が仕込んであり、夜の海で光るようになっているのです。子どもたちは「ウワーッ!!!」と大喜びで、暗いにもかかわらず海中を動き回って、全身で楽しさと喜びを表してくれました。

夜の海を堪能した後は、海が朝になり、みんなでホールに戻ってワークショップを終えました。終了後の振り返りでは、先生から、「制作が苦手な子もいたので、あんなに集中するとは思わなかった。」「今日は能力的な個人差があまり出ずに、一人ひとりが興味を持って取り組んでいた。」「いろんな素材を心豊かに使えた。」などの感想をいただきました。また、この日は作品を夕方まで飾っておき保護者の方に見てもらえるようにしたり、実施後も少し海を残しておいたり、その後も園で活用して下さるとのことでした。
アーティストは、楽しい環境を整えて、楽しい仕掛けを用意して、タイミングを見計らいながら子どもたちを刺激します。でもアーティストが一方的に投げかけるだけではワークショップは成り立ちません。子どもたちの時々の反応や制作の様子に応じて、より制作に集中していけるように、より子どもたちがイメージを広げていけるように刺激をしていく。そうして、出来あがった海の豊かさの中で、子どもたちの集中力と、空間や材料への反応の良さ、一人ひとりが持っている力や想像力の広さに本当に感動した一日でした。
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バレ・バレ/グラフィックデザイナー
https://www.children-art.net/bare_bare/

保育園の5歳児クラス15人を対象に行われた、入手杏奈さん(ダンサー・振付家)のワークショップをご紹介します。静かな動きや賑やかな動きなど、楽しくいろいろな身体の動きを経験させたい、そしていろんな事を楽しめる子どもたちなので、アーティストがやりたい事をめいっぱいやってほしい、という先生からのリクエスト。友だちと触れ合ったり、誰かの真似をしたりすることも含め、40分間、汗だくになるまでめいっぱい身体を動かしました。
ホールに入ってきた子どもたちは、まずアーティストとご挨拶。実は、先生が事前に「バレリーナの人が来るよ。」と伝えて下さったので、チュチュも着ていない入手さんに、少しがっかりしたらしい子どもたち。でも、入手さんが「ダンスをしています。」と自己紹介し、少し踊ってみせると、その面白さに「クスクス」と笑いがこらえきれません。スリッパを飛ばしたり、カーテンの裏から手だけ出して踊ったり、最後には一人ひとりの頭を「ポンポン」とタッチして、子どもたちの心をつかみます。

入手さんの挨拶が終わった後は、子どもたちも先生も、みんな一緒になって身体も使ってご挨拶。近くにいる人と「おはようございます。」と挨拶するところから初めて、指と指で挨拶したり、お尻とお尻で挨拶したり。最後には、子どもたちのアイデアで、頭でご挨拶。相手が痛くないように気をつけながら、そっと頭を「コツン」と挨拶します。
そうして身体がほぐれた後は、輪になってのワークです。隣の人にタッチして、そのまた隣の人にタッチして、相手から送られてくるものを、さらに別の人に渡していきます。隣同士だけではなく、ランダムに好きな人に渡す、というのもやってみました。続いては、一度みんな座ってみます。すると、入手さんから「目を閉じたまま真似をしよう。」との声かけが。子どもたちは意味が分からず「え~?」と言う子もいますが、とにかく目を閉じます。そしてどんな真似をするかと言うと、手で床を叩いたり、足をふみならしたり、音を鳴らす動きの真似でした。要領がわかった子どもたちは納得した様子でワークに取り掛かります。自分の聞いた音の鳴らし方が合っているか気になって目を空けてしまう子もいる中で、まじめにギュッと目を閉じて、正解じゃないけど自分が思った動きで応える子も数名。入手さんは、そういう子も「いいね。」と認めます。

後半は、いろんな動きを経験した身体をさらに開いていきます。面白い擬音語や会話等も用いながら、どんどん入手さんの動きを真似していきます。手拍子したり、寝転がったり、「リンリン」は電話の動作、「モジモジ」は身体をクネクネさせながら、「ムキムキ」は力持ちのポーズなど、ホール中を所せましと移動しながら様々な動きを取り入れます。電話をかける動作をしながら、「お父さん?」「お母さん?」「先生?」「象さん?」など、ユーモアのある台詞も加えて、入手さんの面白い動きや言葉に、子どもたちの笑いも止まりません。

さて、そして最後は、たくさん真似した動きを、「曲に合わせてやってみようか?」という入手さんからの問いかけ。ここでも子どもたちは少し「キョトン」とした様子。そうすると、電話の「リンリンリン」という音がどこからともなく聞こえてきます。そしてかかった曲は、『恋のダイヤル6700』byフィンガー5!実は、これまでの動きが歌詞にピッタリ合うように考えられていたのです。「リンリンリリリン」ではもちろん電話をかける動き、「男らしく」という歌詞のところでは、「ムキムキ」でやったポーズ等など。
最初は、テンポの良い曲のスピードや振りについていくのに必死な子もいますが、何回か繰り返していくと、踊ることがどんどん楽しくなっている様子が伝わってきます。ジャンプするところでは、1回目より2回目、2回目より3回目の方が思いっきり飛ぶようになり、最後に好きなポーズを決めるところも、段々格好良くなっていく子どもたち。曲にのって、身体をいろいろ動かす事そのものを楽しめるようにしていきます。

何回か繰り返し踊っているうちに40分はあっという間に過ぎて行き、一度終わりの挨拶もしたのですが、最後に「もう1回踊りたい!」という事で、最後の最後にもう1回踊って、この日のワークショップを終えました。保育室に戻る時も「リンリン」の動作をしながら名残惜しそうに入手さんに話しかける子が絶えません。今回のワークショップは2日間の実施で1週間後に2回目を迎えるのですが、既に次回を楽しみにしてくれている様子に、スタッフも嬉しくなりました。
実施後の振り返りでは、先生から「早速普段の保育でもやってみます。」との言葉をいただきました。梅雨に入って外で遊ぶ機会も減ってしまうかもしれませんが、身体を動かすのが大好きな子どもたちだったので、これからも身体のいろんな楽しさを発見していってほしいと思いました。
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入手杏奈(いりて あんな)/ダンサー・振付家
https://www.children-art.net/irite_anna/