墨田区立の小学校・特別支援学級、1~6年生の子どもたちと取り組んだ、水越朋さん(振付家・ダンサー)とのワークショップをご紹介します。
「さまざまな想いや想像力を持っていて、秘めたものがある子たちだが、それを表に出す手段をあまり知らないので、いろんな表現する方法を体感してほしい」
そんな想いでワークショップを申し込んでくださった先生。学芸会では『11ぴきのねこ』(作:馬場のぼる)に取り組むことが決まり、みんなの良さを生かした作品づくりに向けて模索しているところでした。
アシスタントの内海正考さん(ダンサー)と共に、普段意識したことのない自分の身体について目を向ける、発見とひらめきの2日間となりました。
1日目、少し緊張した表情で体育館にやってきた子どもたち。
まずは水越さんと内海さんの動きを真似してみることからスタートです。
タテとヨコに身体をぐーんと伸ばして、ぎゅっと縮んでみたり、あらゆる動きを見よう見まねでやってみます。
左右の腕を時計の針のように開き
「これは何時?」「3時!」、「じゃあこれは?」「8時!」
と水越さんの声掛けに、みんな元気に答えていきます。
身体を通したコミュニケーションの中で、頬が緩み、どんどん自由になっていく子どもたち。
「手には何がある?指でどんな形ができる?」という問いかけに、各々がじっくりと自分の手を眺めます。
全員の指を繋げて大きな輪をつくり、グネグネ動かしてイソギンチャクのようにしてみたり、ピースにして星形をつくったり、これもできそう!あれもできそう!と、子どもたちから出たアイデアをみんなでやってみました。
2日目は動物の真似から始まり、水の中の生物、太陽や氷といった物質をイメージして動きました。 「赤の踊り!」と、水越さんからの抽象的な注文にも自然と身体が反応し、青、緑、黄とさまざまな色になっていきます。
トンネルづくりでは、大人が作ったあらゆる形のトンネルを、子どもたちがくぐっていきました。 今度は子どもがトンネル役。先生たちが身体を縮こまらせながらクネクネと芋虫のように通る姿は愉快で、子どもたちからも笑みがこぼれます。
ホワイトボードの前に集合すると、2枚の絵が貼ってありました。
実はこれ、『11ぴきのねこ』に出てくる風景画。
「これからどちらかの絵を選んで踊ってみるね」 絵を見て感じたことを内海さんと水越さんが踊りで見せてくれました。
「どうだった?」
「平和に見えた」「意味わからない」「無人島っぽい」「ヒョウがいる」「次の踊りがみたい」
次々と子どもたちから感想が出てきました。
「意味わからなくてもいいんだよ」「見たいって思うことは大切なこと」と、子どもたちの気持ちに丁寧に向き合う水越さん。
「今度はみんなでやってみよう!」
さっきとは違う2枚の絵を見せ、自分が踊ってみたい絵のグループに分かれました。
まずは観察。絵を回して見方を変えると、見えてくるものが変わってくる不思議さ。
想像力が膨らんだところで、グループで踊りを見せ合いました。
堂々と1人で踊る子やペアになって踊る子、急に人に見られると緊張してしまう子もいましたが、ちいさな動きの中にも美しさを感じる瞬間がたくさんありました。
「恥ずかしくて動きたくないってことは大事。心と身体を一緒にさせているからね。」
水越さんが優しく語りかけます。
お互いに拍手を送り、感想を伝え合う姿は生き生きとしていました。
最後はみんなでフリーダンス。
音楽に合わせて体育館をのびのびと動き回って、2日間のワークショップを終えました。
先生との振り返りでは「普段は自信がなくてみんなの前に出ることが難しい児童が、笑顔で身体表現していたり、話すことが難しい児童が大きな声を出して、声に合わせて動いたりする姿が見られた」という感想をいただきました。
子どもたちの内に秘めているものをどうアウトプットさせるか悩んでいた先生。
「やらないという選択肢をあえて言葉にして認めることで安心感を持ち、より児童の自己肯定感が高まった」と、目を輝やかせながらおっしゃっていました。
さぁ、これからどんな『11ぴきのねこ』が誕生するのでしょうか。
たくさんのアイデアが詰まった、ワクワクする香りが漂ってきますね。
このワークショップは、花王ハートポケット倶楽部の協賛をいただいて実施しました。