2024度、「コープみらい×中央共同募金会『子ども・子育て支援助成~生活に困難がある子どもやその家族への支援活動を応援!〜』の助成を受けて実施した、児童自立支援施設でのワークショップをレポートします。

振付家・ダンサーの鈴木ユキオさんと、アシスタントとして安次嶺菜緒さん、山田暁さんの2名のダンサーと共に、2日間のワークショップを実施しました。子どもたちは、15人程度の3グループに分かれて、各グループ50分間のワークショップを2日間体験しました。

初日、まず初めは、アーティストが踊ってみせる自己紹介からワークショップがスタートしました。3人のダンスに真剣な眼差しを送る子どもたち。3人が子どもたちの列に入って近づくと、ちょっと逃げたり笑ったり、子どもたちの緊張感も自然とほぐれていきました。その後に、ストレッチやジャンプでウォーミングアップをしてワークに入っていきました。

最初のワークは、二人一組になって、相手の動きに付いていくワーク。リーダーが差し出した2本の指に目線を合わせて、指と目線をつなげたままリーダーの動きに付いていきます。丁寧でダイナミックなアシスタントの見本を見てルールが分かったら早速やってみました。リーダーは手を動かすだけでも、付いていく相手は全身を使わなければならず、転がったり身体をひねったり、いつの間にか自分一人ではやらない動きが生まれていました。

次に、少しルールを発展させて、指と目線ではなく、好きな身体の部位を組み合わせてやってみました。例えば肘に耳で付いていったり、拳に肩で付いていったり、身体の部位を変えてみることで、動きの面白さも広がっていきました。

1日目の最後は、ユキオさんとの『手と手のダンス』。二人組で行ったワークと同じ要領で、ユキオさんの手のひらと子どもたちの手のひらでつながって一対一で踊るダンスです。手のひらの間にあたたかさやエネルギーが感じられて、見ている方も幸せな気持ちになるダンスでした。

約1ヶ月後に訪れた2日目のワークショップ。子どもたちがユキオさんたちのことを覚えていて、施設に着いた時から「あの時の人だ」と出迎えてくれました。

2日目のワークショップでは、まずは1日目のワークを思い出してやってみました。1日目よりも動きが豊かになって、大胆な動きが見られたような気がします。

身体がほぐれたところで、新聞を使ったワークに新たに取り組みました。一人が新聞を丸めたり固めたり伸ばしたりしながらいろいろな形をつくり、その形を身体で表してみる、というものです。慣れてきたら、新聞紙を動かし続けて、ポーズや形ではなく、新聞紙の動きを連続した身体の動きで表現していきました。

新聞でどんな形をつくるか、完成形をイメージしながらつくる子もいれば、偶発的に生まれる新聞の一瞬一瞬の動きを身体で受け止めて、どんどん動きに変換していく子もいました。中には、新聞紙の気持ちになったのか、新聞紙が折られた時やグチャグチャにされる度に「イテッ」とか、逆に漂うように動かした時に「フワ〜ッ」という声を出しながら動く子たちもいました。正解はないので、それぞれが想う新聞を表現しているうちに、一人ひとりの身体から、いろいろな形や動きが生まれていきました。それと同時に、新聞という一つのイメージをみんなで共有している楽しさも感じられる時間でした。

グループごとの動きを見せ合った後は、最後にユキオさんのリードで、新聞紙の動きから、新聞をなくしてユキオさん自身を新聞だと思ってみんなで一緒に踊り、2日間のワークショップを終えました。

実施後の子どもたちや職員の方のアンケートには、次のような声が寄せられました。


●子どもたちより

・言葉ではなく、身体で自分の気持ちや考えを表すというのがとても楽しかったです。

・エネルギーがそれぞれあることが分かったので、すごく神秘的な気持ちになれました。

・3回目、できるか分かりませんが会えたら、一緒にまた踊りたいです。

・音楽はあるけれど、リズムに合わせるたりすることなく自由に踊れることが印象に残っています。

・音やリズムに合わせるだけではなく、目や手で、感じることで、全身で楽しむことができました。

・一人ひとり“自分らしさ”を身体で表現していて、他の人を見るのも面白いと思いました。

 

●職員の方々より

・ペアになって動く活動では、その子の性格が表れているのを感じ、興味深かった。

・集団生活が苦手な子が、生き生きと参加しているのが印象的でした。

・笑顔で活動をすることで、より身体が動くことが分かったような発言があった。

・帰寮後の会話から、子どもたちがいろいろと刺激を受け、感じた様子が見てとれました。


 

終わった後には、バレーや野球の練習があると言っていた子どもたち。日頃から運動の機会はたくさんあるようですが、スポーツとはまた少し違ったダンスの面白さや心地良さが伝わっていたら良いなと思います。

子どもたちが、芸術、文化活動にふれて様々な表現方法を身に着けることが、生きる力を育むことにつながるという想いに共感してくださり、今回の活動を支えてくださった寄付者の皆様、そしてコープみらいと中央共同募金会の皆様に心より感謝申し上げます。

芸術家と子どもたちでは、公益財団法人パブリックリソース財団(以下、パブリックリソース財団)と一般社団法人プロジェクト希望(以下、プロジェクト希望)が協働し、創設した「感動体験支援基金」の第2回目(2023年度)のご支援を受けて、児童養護施設とファミリーホームに暮らす子どもたちと、202429月に9日間のワークショップを実施しました。 最終日には、特別養護老人ホームに出向き、敬老の日イベントのパフォーマンスとして、オリジナルのダンス作品の発表会を行いました。

  ◎ワークショップ実施概要

児童養護施設・ファミリーホーム ×北川結・水内貴英
参加した子どもたち

児童養護施設1施設、ファミリーホーム1施設 計18人(年中~高校1年生及び退所者)

アーティスト

北川結(ダンサー・振付家・イラストレーター)、水内貴英(美術家)

アシスタント・アーティスト

中村理(ダンサー・絵描き)、内海正考(ダンサー・三味線弾き)、辻󠄀田暁(ダンサー・俳優)

ワークショップ実施日 ➀2/24 ②3/9 ③5/12 ➃6/2 ⑤6/23 ➅7/28 ⑦8/4 ⑧8/23 ⑨9/1(最終日は発表)

アーティストと子どもたちが出会ったのは2月。そこから9月の発表までに、北川結さんたちとダンスを6回・水内貴英さんと美術を2回、丁寧にワークショップを積み重ねていきました。

ダンスワークショップ・前半は、北川さんの動きを真似したり、自分の考えるおしゃれなグー・チョキ・パーを全身で表現してみたり、三味線の音にあわせて動いてみたり、身体でたくさん遊びながら一人ひとりの豊かな表現を引き出していきました。みんなで円になって拍手やポーズを隣の人から受け取って隣の人に渡したり、2人組になって相手の呼吸やイメージを感じ取りながら協力して自由にポーズをとったりと、他者とのつながりを大切にしたワークも味わいました。

美術のワークショップでは、持ち運びができる舞台美術として、被って変身する「ゆるキャラぶくろ」をつくりました。身体全体がすっぽり隠れる大きな白い袋に、ペンやクレヨンで絵を描いたり、毛糸やテープで装飾したり。水内さんの「こういうものをつくらなきゃということはないので、自由にやっていいです。すぐやらなくてもいいです、一生懸命やらなくてもいいです。自分の気持ちに素直にやってください。」という言葉をきっかけにスタート。寝そべりながら描いたり、おしゃべりしながら他の子を手伝ったり、ゆるやかに流れる時間の中で、それぞれのこだわりが溢れる個性的なキャラクターが誕生しました。

ダンスワークショップ・後半は、引き続き丁寧に関係性やワークを積み重ねることを大事にしながらも、発表を意識した取り組みに。「こんなダンスを踊ってみたい!」とソロダンスで自分の思いをかたちにすることに挑戦したり、グループで「みんなでやったら面白そうな動き」のアイデアを出し合って息をそろえて動いてみたりしました。発表前、最後のワークショップでは、北川さんが子どもたちそれぞれの好きな色でつくってくれた世界で1つだけのTシャツもお披露目。

いよいよ9月1日。老人ホームの利用者さんや職員さん、児童養護施設やファミリーホームの職員さんも含めて総勢80名ほどのお客さんを前に、これまでの成果を発表しました。皆様からのやさしい眼差しの中、ゆるキャラぶくろでの登場、ソロダンス・グループの動きを、いきいき踊りきった子どもたち。  

敬老の日のイベントということもあり、90歳や100歳など節目を迎える方へ色紙のプレゼントを渡すという大役も任してもらいました。それぞれが考えたユニークな動きで色紙を渡しに行くと、涙を浮かべる方も。カーテンコールでも皆様からたくさんの拍手をいただき、とてもあたたかい時間となりました。

また、この日のために感動体験支援基金 創設者の平井一夫さん、プロジェクト希望の皆様が駆けつけてくださり、子どもたちに素敵な感想とエールをおくってくださいました。

発表会後に子どもたちから感想を聞くと「楽しかった、またやりたい」「おじいちゃんおばあちゃんがよろこんでくれてうれしかったです」と。充実さが伺える子どもたちの表情が印象的でした。

アーティストのつくる安心した雰囲気の中で、子どもたちがのびのびと自分を表現する姿、ちょっと一歩踏み出してみる姿、また休憩中の何気ないおしゃべりも、毎回がかけがえのない素敵な瞬間でした。

アーティストの皆様、歩みを共にしてくださった児童養護施設・ファミリーホームの皆様、発表の機会として温かく迎えてくださった社会福祉法人 緑友会 小川ホームの皆様、そして、アーティストと子どもたちの出会いの機会をくださったパブリックリソース財団とプロジェクト希望の『感動体験支援基金』の皆様に、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。 

 

写真:14枚目 NPO法人芸術家と子どもたち、513枚目 金子愛帆

2021年度から3年間、BNPパリバ財団の芸術教育支援プログラム「Dream Up」の支援をいただいて実施してきた、児童養護施設と障害児入所施設でのワークショップの最終年度のレポートです。「Dream Up」は、芸術教育を通じて世界の子どもたちを支援する社会貢献活動で、社会的に不利な状況にある子どもたちに、才能開花の機会を提供するために、世界30か国で展開されています。(※プロジェクトの概要や2021年度2022年度の記事)

◎2023年度実施概要

児童養護施設×棚川寛子  
参加した子どもたち 2施設(交流)小学1年~高校3年生 17人
アーティスト 棚川寛子(舞台音楽家)
アシスタント・アーティスト 井上貴子(俳優)、加藤幸夫(俳優)、黒木佳奈(俳優)、佐藤円(俳優)
ワークショップ実施日 ➀11/26 ②12/23 ③1/27 ➃2/4 ⑤2/25 ➅3/9 ⑦3/16 ⑧3/30
障害児入所施設×前期:新井英夫  
参加した子どもたち 小学4年生~高校3年生 11名
アーティスト 新井英夫(体奏家・ダンスアーティスト)
アシスタント・アーティスト 板坂記代子(ダンサー)、はしむかいゆうき(演奏家)
ワークショップ実施日 ➀10/15 ②11/11 ③12/17 ➃5/5(美術館遠足)
障害児入所施設×後期:松岡大  
参加した子どもたち 小学4年生~高校3年生 11名
アーティスト 松岡大(舞踏家)
アシスタント・アーティスト 高嶋柚衣(俳優)、加藤理愛(ダンサー)、小山まさし(ダンサー)
ワークショップ実施日 ➀1/20 ②3/10 ③3/26 ➃4/3 ⑤4/20

・児童養護施設での2施設交流ワークショップ

舞台音楽家・棚川寛子さんたちと、2つの児童養護施設の子どもたちが交流するワークショップを実施しました。

3年目となる2023年度のワークショップは、台本づくりから演出に至るまで、子どもたち自身の手によるオリジナル劇の創作にチャレンジしました。

ワークショップ初日、アーティストから子どもたちに、今回どんな作品をつくってみたいか問いかけると、ある子から「演劇の発表がしてみたい」という提案があり、今回の創作がスタートしました。どんなストーリーを演じてみたいか、どんなキャラクターになって登場したいかなど、作品のあらすじをみんなで考えた後、台本づくりに名乗りをあげた2人の子が、お互いのアイデアをやり取りしながら、ひとつの物語にまとめてくれました。そして、台本の台詞や動きなどを基に、子どもたち自身が想像力を働かせながら、シーンをつくっていきました。

また、衣装についても、アーティストや職員のサポートを受けながら、子どもたち一人ひとりが自分の登場キャラクターに合わせてデザイン・制作をしました。

発表では、ジェスチャーゲームのクイズ合戦やダンス対決など、子どもたちの「こんなことがやってみたい!!」というアイデアがたくさん詰まった作品になりました。

 

・障害児入所施設でのワークショップ

前期は、体奏家・ダンスアーティストの新井英夫さんたちと、zoomを使ったオンラインでのワークショップを実施、後期は、舞踏家・松岡大さんたちと対面でのワークショップを行いました。

新井さんとのオンライン・ワークショップは子どもたちを3グループに分けて実施。少人数のグループで、個々の興味・関心に寄り添えるようにしながら、それぞれの表現を引き出していきました。手をつないでみんなで輪になって一緒に身体を動かしたり、誰かと身体の一部をくっつけてポーズをつくったり、人との関わりも大切にしながらワークショップを重ねました。また、人がすっぽり入れる「チューブ布」を使って、魔法使いになったつもりで動きを考えるなど、イメージを楽しむワークも取り入れました。

 

後期は、松岡さんと学園を訪れての対面でのワークショップを行いました。5人程度の2グループに分けて、2人組や、みんなで協力して動くワーク、好きな曲に合わせて、列や輪になってみんなで一緒に踊ることなどを楽しみました。ある子は、毎回ワークショップが始まる少し前にアーティストの所に来て、その日どんなことをしたいか、どんな曲を使いたいかなど相談する時間も設けました。そうすると、彼からやりたいことの提案があり、それをアーティストと一緒に試してみた後、他の子が揃ったら彼とアーティストのダンスをまず見てから始めることもあり、リーダーシップを発揮してくれました。

最終回は、衣装のDream Up Tシャツを着て、施設内のワークショップに参加していない子どもたちや職員さんを巻き込んだ発表会を開催しました。ワークショップでつくった踊りを披露した後は、見ていた子どもたちも次から次へと自然に参加するダンスタイムへ。一緒に踊ったみんなでカーテンコールをして拍手をもらい、あたたかな時間となりました。

そして今回は後日、特別に前期のアーティスト・新井英夫さんが作品を出品している、東京都現代美術館での企画展『翻訳できない わたしの言葉』の観覧に、子どもたちや職員の皆さんと一緒に出かけました。初年度にワークショップに参加して、既に退所している若者も参加し、展示されているワークショップの写真を見たり、新井さんと一緒に体験コーナーに参加したりするなど、楽しい冒険の一日となりました。 

3年間を通して、BNPパリバ社員の方が子どもたちと一緒にワークショップに参加したり、発表を見届けて子どもたちにメッセージを伝えてくださったりしたことがたくさんありました。子どもたちにとってもいろいろな大人と出会う機会となり、一緒に事業を支えてくださったことに、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。

 

 

芸術家と子どもたちでは、2021年度からの3年間、BNPパリバ財団の芸術教育支援プログラム「Dream Up」の支援を受けて、児童養護施設と障害児入所施設でのワークショップを実施しています。「Dream Up」は、芸術教育を通じて世界の子どもたちを支援する社会貢献活動で、社会的に不利な状況にある子どもたちに、才能開花の機会を提供するために、世界30か国で展開されています。

今回のブログでは、2年目となる2022年度の活動をご紹介します。(プロジェクトの概要や2021年度の記事はこちら

◎2022年度実施概要

児童養護施設×棚川寛子        
参加した子どもたち 2施設(交流)小学1年~高校2年生、施設退所者 18人
アーティスト 棚川寛子(舞台音楽家)
アシスタント・アーティスト 井上貴子(俳優)、加藤幸夫(俳優)、黒木佳奈(俳優)、佐藤円(俳優)
ワークショップ実施日 ➀9/25 ②10/16 ③11/13 ➃12/17 ⑤1/29 ➅2/19 ⑦3/25 ⑧3/26
障害児入所施設×新井英夫       
参加した子どもたち 小学4年生~高校3年生 11名
アーティスト 新井英夫(体奏家・ダンスアーティスト)
アシスタント・アーティスト 板坂記代子(ダンサー)、はしむかいゆうき(演奏家)
ワークショップ実施日 ➀11/12 ②1/9 ③2/5 ➃3/5 ⑤3/18       

・児童養護施設での2施設交流ワークショップ

舞台音楽家・棚川寛子さんたちと、2つの児童養護施設の子どもたちが交流するワークショップを実施しました。

2022年度のテーマは『生物多様性』。2回目のワークショップで、BNPパリバの社員の方にレクチャーをしていただき、そこから子どもたちがどんなことをしたいか、どうやって生物多様性を表現できるかを考えました。そして、ある子の「みんなで木をつくり、そこにそれぞれが考えた『いなくなったら困る生き物』を展示したら良いんじゃない?」という提案から創作が始まりました。クジラ、レッサーパンダ、ウサギ、イヌワシ、蝶など、一人ひとりがどの生き物を担当するかを決めて、まずは工作に取り組みました。友だちと協力したり、職員さんやアーティストたちに手伝ってもらったりしながら、いろんな動物が完成しました。

発表では、つくった生き物を影絵のクイズにして、観客参加型のコーナーを設けました。そして、その動物について調べたことを発表していきました。最後には、「子どもがいなくなったら意味がない!」ということで、子どもたちが子ども役でダンスを踊りました。

また、影絵のパフォーマンス中には、キーボードやカホンなど楽器の演奏や、照明の操作にも子どもたちが加わり、発表会をあたたかく盛り上げました。

 

・障害児入所施設でのワークショップ

体奏家・ダンスアーティストの新井英夫さんたちと、zoomを使ったオンラインでのワークショップを重ねました。

子どもたちの特性に合わせて、3グループに分けて実施。少人数のグループにすることで、個々の興味・関心に寄り添いながら、身体や音を使った表現を引き出していきました。ワークショップの始まりは、タイコの音で今日の気分を伝え合いました。思いっきり叩いて大きな音を出す子もいれば、最初は恥ずかしそうにそっと叩く子など、日によっていろんな音の挨拶をしました。そして、誰かと一緒に手をつないで「なべなべ底抜け」をしたり、ペアになって身体の一部をくっつけるポーズを考えたり、職員さんも一緒になって身体を動かして、人と人との関わりを楽しむ時間を積み重ねました。

また、工作や物語が好きな子とは、洗濯ばさみや毛糸、紙皿など身近なモノや、カラー粘土を使ったコマ撮りアニメの制作に挑戦しました。カラフルな洗濯ばさみを思いつくままに動かして虹のような形をつくったり、折り紙や毛糸を組み合わせて少しずつ動かし、カレーライスのつくり方を表現する様子に、職員さんもアーティストも感心していました。

 

衣装は、Dream UpのTシャツを、カラフルな端切れを使って加工してオリジナルの衣装にしました。当日は、BNPパリバの社員の方も一緒に参加して、子どもたちのリクエストに応えて一緒に素敵な作品をつくってくださいました。仮面ライダー好きの子は、緑系の色の端切れを集めて貼るのを手伝ってもらい、残念ながらお休みしてしまった子のTシャツは、お姫様が好きということで、社員の方が代わりにつくってくれました。

最後の日は、衣装のTシャツを着て、グループごとにファッションショーのランウェイを歩くつもりで踊る様子を記録して、後日施設内で鑑賞してもらえるようにしました。自分が好きな曲や、音楽の雰囲気をアーティストにリクエストして即興で演奏してもらい、最後は思い思いにポーズ!満足そうな表情が印象的でした。

今年度もBNPパリバ社員の方には何度もワークショップに足を運んでいただき、発表をご覧になった後には子どもたちに感想を伝えてもらうなど、あたたかく活動を支えていただきました。レクチャーを聞いたり、工作を手伝ってもらったり、新しい人との出会いや関わりがあることは、子どもたちにとっても嬉しい時間になったことと思います。2022年度もコロナ対策の影響などがあり、発表の日に現地に多くの社員の方をお招きすることはできませんでしたが、一緒に事業を見守ってくださったこと、改めて心よりお礼申し上げます。

★コマ撮りした画像に音楽を付けて動画にしました!

(アニメーション作成:高校生I君/編集・音楽:はしむかいゆうき/ナビゲーター:新井英夫、板坂記代子)

 

芸術家と子どもたちでは、2021年度からの3年間、BNPパリバ財団の芸術教育支援プログラム「Dream Up」の支援を受けて、児童養護施設と障害児入所施設でのワークショップを実施しています。今回のブログでは、2021年度の活動をご紹介します。

「Dream Up」は、芸術教育を通じて世界の子どもたちを支援する社会貢献活動で、社会的に不利な状況にある子どもたちに、才能開花の機会を提供するために、世界30か国で展開されています。

今回のプロジェクトでは、社会的養護の下にある子どもたちや、障害のある子どもたちが、ダンスや音楽、演劇などの表現活動を通じて、他者とのふれあいや、自他の表現を認め合う経験を重ねながら、それぞれがやりたいことを見つけ尊重し、その力を伸ばすことをサポートします。そして、彼らの傷ついた心を回復し、自分や人を信じる力、人と関わる力を育てることで、彼らの自立を支援することを目的として始めました。

◎2021年度実施概要

児童養護施設×棚川寛子      
参加した子どもたち2施設(交流) 年中~中学3年生、施設退所者 18人
アーティスト棚川寛子(舞台音楽家)
アシスタント・アーティスト井上貴子(俳優)、加藤幸夫(俳優)、佐藤円(俳優)
ワークショップ実施日➀10/9 ②11/27 ③12/5 ➃12/26 ⑤1/9 ➅3/12 ⑦4/4 ⑧4/5
障害児入所施設×新井英夫     
参加した子どもたち小学5年生~高校3年生 12名
アーティスト新井英夫(体奏家・ダンスアーティスト)
アシスタント・アーティスト板坂記代子(ダンサー)、はしむかいゆうき(演奏家)
ワークショップ実施日日➀11/20 ②12/12 ③1/7 ➃1/30 ⑤2/23 ➅5/8       

・児童養護施設でのワークショップ

舞台音楽家・棚川寛子さんたちと、2つの児童養護施設の子どもたちが交流するワークショップを実施しました。2回目のワークショップでは、BNPパリバ社員の方から、BNPパリバの紹介や、SDGsのレクチャーをしていただきました。レクチャーの前には、英語のゲームで楽しく身体を動かして、子どもたちはその後のSDGsのお話を集中して聞いていました。丁度学校で勉強したばかりの子もいて、身近に感じることもあったようです。

そして、レクチャーで聞いたお話を元に、アーティストの棚川寛子さんたちとオリジナルの物語を一緒に創作しました。「自然」「環境」「貧困」などのキーワードから出てきたアイデアを、一つずつつなげて物語にしていきました。台本はありませんでしたが、子どもたち自身が想像力を働かせ、自分たちで言いたい台詞や動き、なりたい役を考えてシーンをつくっていきました。

<子どもたちが考えたアイデア>

・海の王国-海が汚れて、食べる物がなくなり困っている。

・飢餓を無くすためにコロッケ屋さんをやりたい。

・目が見えなくて困っている「白杖の女の子」の役をやりたい。

・小さい子がいじめられているのを助けたい。差別を無くそう。

・森を守る妖精になりたい。

・エコカーをつくりたい。

・訪問医療チーム(KISA2隊)になりたい。

また、衣装や美術は、Dream UpのTシャツにペイントをしたり、段ボールや不要になったカーテンや端切れなどの廃材を活用して船や車をつくったり、子どもたちと手づくりしました。こうして回を重ねて少しずつ形にしながら『海の王国とひそむ影』というオリジナルの物語を創作し、最終回には施設内職員の方に向けて発表会を行いました。

・障害児入所施設でのワークショップ

体奏家・ダンスアーティストの新井英夫さんたちと、zoomを使ったオンラインでのワークショップを重ねました。 オンラインということもあり、子どもたちの特性に合わせて、少人数の3グループに分けて実施。身体遊びや音遊びを通して、人と関わりながら、一人ひとりの興味・関心に寄り添い、オンラインならではの、映像の効果も楽しみながら取り組みました。

衣装は、Dream UpのTシャツを、学園にある自然素材や廃材を活用してペイントしました。いろんな形の枝や葉っぱ、輪ゴムや梱包材のプチプチなどを使って、スタンプのように使ってペイントしました。

最後の日は、衣装のTシャツを着てグループごとに映像を録画。後日施設内の職員や子どもたちが鑑賞できるようにしました。ファッションショーのつもりで、つくったTシャツを衣装に、それぞれが即興で自由に踊りを披露しました。物語が好きな男の子は、目をいろんな物に貼り付けて、見立てで遊びながら、アーティストと即興のお話をつくりました。

この二つのプロジェクトを通して、BNPパリバのCSR担当社員の方とミーティングを重ね、実際にワークショップにも何度も足を運んでいただきました。残念ながら、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響を受けて、発表会に多くのBNPパリバグループの方をお招きすることは叶いませんでしたが、発表後には社員ボランティアの方々から手づくりのプレゼントをいただき、子どもたちもとても喜んでいました。

また、後日、社員の方には映像で発表をご覧いただけるようにするとともに、ランチタイムを活用した1時間程度のオンライン・セッションを設けてくださり、施設職員と事務局スタッフで、それぞれの施設の現状と課題や事業報告をさせていただきました。100人ほどの社員の方が視聴してくださったということで、

「活動や発表の様子を拝見できて、感動しました。」

「心健やかに育ってほしいきもちでいっぱいです。」

「自分の子どもの環境が、当たり前ではないということに、改めて気づかされました。」

などの感想をいただき、私たち事務局スタッフにとっても学びとなる貴重な機会でした。

児童福祉施設での取り組みは、様々な事情から広く広報することが難しいのですが、こうした形で企業の方が一緒に事業に取り組んでくださることは大きな励みになりました。この場を借りて改めてお礼を申し上げます。

芸術家と子どもたちでは、小学校や保育園だけではなく、児童養護施設でのワークショップも実施しています。今回は、平成26年度に公益財団法人JKA「RING! RING! プロジェクト」の補助を受けて実施した取り組みをご紹介します。
児童養護施設のワークショップでは、施設の担当職員の方との打合せを密に行い、参加対象となる子どもたちの要望や実態を丁寧にヒアリングして実施を迎えます。ある施設では、自己表現や他者との関わりが苦手な小学生を中心に、身体を動かしながら自信を持って自分を表現することを楽しめるような活動を、という希望を受けて身体表現のワークショップを実施しました。実施期間は11月~3月に全10回、最終日には施設の職員の方などに向けて発表の機会を設けました。
最初は、アーティストの動きの真似などから始まったワークショップですが、それぞれの興味関心の違いや、参加することになった子どもたち同士の関係性を築くことにも時間がかかり、時にはワークが思うように進まないこともありました。
しかし、回数を重ねていくうちに、アーティストに対する子どもたちの信頼も深まり、子どもたち同士のコミュニケーションも豊かになっていきました。互いに身体の一部をくっつけたまま動物の形をみんなでつくってみたり、一人ひとりのアイデアを拾いながらリズムに合わせた振付を考えたりするなど、身体を介した他者とのふれあいや関わりを促すことで、参加している子どもたち同士の関係性が豊かになっていきました。
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また、側転や三点倒立など、子どもたちが得意なことや挑戦してみたいこともワークショップの中に取り入れ、それぞれの個性を発揮する場も設けました。中には、ワークショップ以外に普段の生活でも自主的に練習をするなどの意欲を見せる子もいて、その気持ちを受け止めながら、発表会を設けることにもしました。
発表会では、ワークショップで取り組んできた、視線を合わせたまま相手の動きを感じて即興的に踊ることや、それぞれが考えた振付のシーン、一人ひとりが得意技も織り交ぜてソロで踊るシーンなどで作品を構成しました。
大勢の人の前での発表に緊張や戸惑いもありましたが、終わった後に、大きな拍手と職員の方々からの感想など、たくさんの温かい反応を得て、子どもたちの満足そうな笑顔が見られました。また、発表を終えた後にも、普段の生活の中で職員の方と子どもたちがワークショップや発表のことを話題にするなど、施設内での職員と子どもたちとの関わりの面でも、子どもたちを褒める機会が広がったという声もありました。
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近年、児童養護施設における自立支援の拡充に向け、外部支援団体の支援活動なども多様化していますが、半年近い期間に継続して実施する芸術の分野からのアプローチはまだまだ未開拓の分野と言えます。しかし、ワークショップを実施した施設の方からは、継続実施を希望される声も多くいただきました。ダンスや音楽などの表現活動という新しい手法、今までとは違った視点で子どもの自尊感情や自己肯定感の育成に寄与できるよう、これからも事業の拡充につとめていきたいと思います。
※児童養護施設とは、保護者がいない、虐待を受けているなど、様々な家庭の事情により、家族と暮らせない子どもたちが生活する施設です。厚生労働省による2013年の調査では、入所児童の内、虐待を受けた経験のある子どもの割合は59.3%、何らかの障害のある児童は28.5%に上り、一人ひとりの特性に合った支援の充実が求められています。また、大学などへの進学率は22.9%と一般に比べて低く、自己肯定感をもって自分らしく生きる力を育むなど、自立支援の拡充も大きな課題となっています。
※公益財団法人JKA「RING!RING!プロジェクト」
https://www.ringring-keirin.jp/