都内公立保育園の子どもたちと取り組んだ石坂亥士さん(神楽太鼓演奏家・踊るパーカッショニスト)とのワークショップをご紹介します。今回は4歳児、5歳児クラスの子どもたちと、それぞれ60分ずつの音楽のワークショップを行いました。

保育園のホールに子どもたちが入っていくと、見たことのないたくさんの楽器を発見!! 「どうしたら音が鳴るんだろう? どんな音がするんだろう?」と興味津々の子どもたちですが、ホールのなかには石坂さんらしい人物はどこにも見当たりません。子どもたちがキョロキョロと周囲を見渡して石坂さんを探していると、ホール奥の扉の裏から太鼓の音が聞こえてきます。音の方に振り返ると、なんと亀の甲羅を首からぶら下げた石坂さんが、太鼓を脇に抱えて演奏しながら登場してきました!!

そして、石坂さんはホールに置かれた楽器の一つひとつを演奏しながら子どもたちの間を練り歩いて、楽器の音色や演奏の仕方を子どもたちに紹介していきます。子どもたちは頭の上で奏でられるシンギングボウル(「シンギング」=歌う・音を出す、「ボウル」=器。鉢の形をした金属製の打楽器)の音の響きや空気の振動にビックリしたり、鹿の角で叩かれた亀の甲羅の音色に目を丸くしたり、初めて聞く楽器の音色にワクワク・ドキドキ。

「早く自分たちも楽器を演奏してみたい!!」 子どもたちの楽器への好奇心がいっぱいに膨らんでいったところで、石坂さんが子どもたちの一人ひとりに楽器を渡して、石坂さんと子どもたちの即興演奏がスタート。最初は石坂さんの太鼓のリズムにあわせて目の前にある楽器を演奏していた子どもたちでしたが、石坂さんが床に横倒したジャンベにまたがって、まるでソリに乗るかのようにホールを移動しながら自由に演奏する姿を見ているうちに、子どもたちが一人、また一人と自分が興味を持った楽器のところに走り寄って演奏を始めました。

その後は、もうすっかり子どもたちの自由時間。石坂さんの奏でるリズムにあわせて一緒になって演奏をしたり、楽器を持ち寄って友達同士で演奏を楽しんだり、お気に入りの楽器を奏でながらホールのなかを行進したり、子どもたち一人ひとりが思い思いの楽器に触れながら、自分だけの音を発見して奏でていきました。

気が付けば、子どもたち曰く「あっという間だった!!」60分間のワークショップも終了時間に。実はワークショップの始めから終わりまで、石坂さんはひと言も喋らずにワークショップを進めていきました。そして、始めから終わりまで、常に子どもたちの様子に目を配りながら、時にゆったりとしたリズムで子どもたちを優しく包み込み、また激しいリズムで子どもたちを鼓舞したり、音とリズムでたくさんの会話を子どもたちとしてくれました。

朝早くから楽器の搬入出や準備にご協力くださり、子どもたちと一緒になって楽器を奏でてワークショップに参加してくださった先生方、本当にありがとうございました!! 全身を使って楽器を奏でる子どもたちのエネルギーが、音とリズムになって昇華していったワークショップの時間でした。