2021年度から3年間、BNPパリバ財団の芸術教育支援プログラム「Dream Up」の支援をいただいて実施してきた、児童養護施設と障害児入所施設でのワークショップの最終年度のレポートです。「Dream Up」は、芸術教育を通じて世界の子どもたちを支援する社会貢献活動で、社会的に不利な状況にある子どもたちに、才能開花の機会を提供するために、世界30か国で展開されています。(※プロジェクトの概要や2021年度2022年度の記事)

◎2023年度実施概要

児童養護施設×棚川寛子  
参加した子どもたち 2施設(交流)小学1年~高校3年生 17人
アーティスト 棚川寛子(舞台音楽家)
アシスタント・アーティスト 井上貴子(俳優)、加藤幸夫(俳優)、黒木佳奈(俳優)、佐藤円(俳優)
ワークショップ実施日 ➀11/26 ②12/23 ③1/27 ➃2/4 ⑤2/25 ➅3/9 ⑦3/16 ⑧3/30
障害児入所施設×前期:新井英夫  
参加した子どもたち 小学4年生~高校3年生 11名
アーティスト 新井英夫(体奏家・ダンスアーティスト)
アシスタント・アーティスト 板坂記代子(ダンサー)、はしむかいゆうき(演奏家)
ワークショップ実施日 ➀10/15 ②11/11 ③12/17 ➃5/5(美術館遠足)
障害児入所施設×後期:松岡大  
参加した子どもたち 小学4年生~高校3年生 11名
アーティスト 松岡大(舞踏家)
アシスタント・アーティスト 高嶋柚衣(俳優)、加藤理愛(ダンサー)、小山まさし(ダンサー)
ワークショップ実施日 ➀1/20 ②3/10 ③3/26 ➃4/3 ⑤4/20

・児童養護施設での2施設交流ワークショップ

舞台音楽家・棚川寛子さんたちと、2つの児童養護施設の子どもたちが交流するワークショップを実施しました。

3年目となる2023年度のワークショップは、台本づくりから演出に至るまで、子どもたち自身の手によるオリジナル劇の創作にチャレンジしました。

ワークショップ初日、アーティストから子どもたちに、今回どんな作品をつくってみたいか問いかけると、ある子から「演劇の発表がしてみたい」という提案があり、今回の創作がスタートしました。どんなストーリーを演じてみたいか、どんなキャラクターになって登場したいかなど、作品のあらすじをみんなで考えた後、台本づくりに名乗りをあげた2人の子が、お互いのアイデアをやり取りしながら、ひとつの物語にまとめてくれました。そして、台本の台詞や動きなどを基に、子どもたち自身が想像力を働かせながら、シーンをつくっていきました。

また、衣装についても、アーティストや職員のサポートを受けながら、子どもたち一人ひとりが自分の登場キャラクターに合わせてデザイン・制作をしました。

発表では、ジェスチャーゲームのクイズ合戦やダンス対決など、子どもたちの「こんなことがやってみたい!!」というアイデアがたくさん詰まった作品になりました。

 

・障害児入所施設でのワークショップ

前期は、体奏家・ダンスアーティストの新井英夫さんたちと、zoomを使ったオンラインでのワークショップを実施、後期は、舞踏家・松岡大さんたちと対面でのワークショップを行いました。

新井さんとのオンライン・ワークショップは子どもたちを3グループに分けて実施。少人数のグループで、個々の興味・関心に寄り添えるようにしながら、それぞれの表現を引き出していきました。手をつないでみんなで輪になって一緒に身体を動かしたり、誰かと身体の一部をくっつけてポーズをつくったり、人との関わりも大切にしながらワークショップを重ねました。また、人がすっぽり入れる「チューブ布」を使って、魔法使いになったつもりで動きを考えるなど、イメージを楽しむワークも取り入れました。

 

後期は、松岡さんと学園を訪れての対面でのワークショップを行いました。5人程度の2グループに分けて、2人組や、みんなで協力して動くワーク、好きな曲に合わせて、列や輪になってみんなで一緒に踊ることなどを楽しみました。ある子は、毎回ワークショップが始まる少し前にアーティストの所に来て、その日どんなことをしたいか、どんな曲を使いたいかなど相談する時間も設けました。そうすると、彼からやりたいことの提案があり、それをアーティストと一緒に試してみた後、他の子が揃ったら彼とアーティストのダンスをまず見てから始めることもあり、リーダーシップを発揮してくれました。

最終回は、衣装のDream Up Tシャツを着て、施設内のワークショップに参加していない子どもたちや職員さんを巻き込んだ発表会を開催しました。ワークショップでつくった踊りを披露した後は、見ていた子どもたちも次から次へと自然に参加するダンスタイムへ。一緒に踊ったみんなでカーテンコールをして拍手をもらい、あたたかな時間となりました。

そして今回は後日、特別に前期のアーティスト・新井英夫さんが作品を出品している、東京都現代美術館での企画展『翻訳できない わたしの言葉』の観覧に、子どもたちや職員の皆さんと一緒に出かけました。初年度にワークショップに参加して、既に退所している若者も参加し、展示されているワークショップの写真を見たり、新井さんと一緒に体験コーナーに参加したりするなど、楽しい冒険の一日となりました。 

3年間を通して、BNPパリバ社員の方が子どもたちと一緒にワークショップに参加したり、発表を見届けて子どもたちにメッセージを伝えてくださったりしたことがたくさんありました。子どもたちにとってもいろいろな大人と出会う機会となり、一緒に事業を支えてくださったことに、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。