2024度、「コープみらい×中央共同募金会『子ども・子育て支援助成~生活に困難がある子どもやその家族への支援活動を応援!〜』の助成を受けて実施した、児童自立支援施設でのワークショップをレポートします。

振付家・ダンサーの鈴木ユキオさんと、アシスタントとして安次嶺菜緒さん、山田暁さんの2名のダンサーと共に、2日間のワークショップを実施しました。子どもたちは、15人程度の3グループに分かれて、各グループ50分間のワークショップを2日間体験しました。

初日、まず初めは、アーティストが踊ってみせる自己紹介からワークショップがスタートしました。3人のダンスに真剣な眼差しを送る子どもたち。3人が子どもたちの列に入って近づくと、ちょっと逃げたり笑ったり、子どもたちの緊張感も自然とほぐれていきました。その後に、ストレッチやジャンプでウォーミングアップをしてワークに入っていきました。

最初のワークは、二人一組になって、相手の動きに付いていくワーク。リーダーが差し出した2本の指に目線を合わせて、指と目線をつなげたままリーダーの動きに付いていきます。丁寧でダイナミックなアシスタントの見本を見てルールが分かったら早速やってみました。リーダーは手を動かすだけでも、付いていく相手は全身を使わなければならず、転がったり身体をひねったり、いつの間にか自分一人ではやらない動きが生まれていました。

次に、少しルールを発展させて、指と目線ではなく、好きな身体の部位を組み合わせてやってみました。例えば肘に耳で付いていったり、拳に肩で付いていったり、身体の部位を変えてみることで、動きの面白さも広がっていきました。

1日目の最後は、ユキオさんとの『手と手のダンス』。二人組で行ったワークと同じ要領で、ユキオさんの手のひらと子どもたちの手のひらでつながって一対一で踊るダンスです。手のひらの間にあたたかさやエネルギーが感じられて、見ている方も幸せな気持ちになるダンスでした。

約1ヶ月後に訪れた2日目のワークショップ。子どもたちがユキオさんたちのことを覚えていて、施設に着いた時から「あの時の人だ」と出迎えてくれました。

2日目のワークショップでは、まずは1日目のワークを思い出してやってみました。1日目よりも動きが豊かになって、大胆な動きが見られたような気がします。

身体がほぐれたところで、新聞を使ったワークに新たに取り組みました。一人が新聞を丸めたり固めたり伸ばしたりしながらいろいろな形をつくり、その形を身体で表してみる、というものです。慣れてきたら、新聞紙を動かし続けて、ポーズや形ではなく、新聞紙の動きを連続した身体の動きで表現していきました。

新聞でどんな形をつくるか、完成形をイメージしながらつくる子もいれば、偶発的に生まれる新聞の一瞬一瞬の動きを身体で受け止めて、どんどん動きに変換していく子もいました。中には、新聞紙の気持ちになったのか、新聞紙が折られた時やグチャグチャにされる度に「イテッ」とか、逆に漂うように動かした時に「フワ〜ッ」という声を出しながら動く子たちもいました。正解はないので、それぞれが想う新聞を表現しているうちに、一人ひとりの身体から、いろいろな形や動きが生まれていきました。それと同時に、新聞という一つのイメージをみんなで共有している楽しさも感じられる時間でした。

グループごとの動きを見せ合った後は、最後にユキオさんのリードで、新聞紙の動きから、新聞をなくしてユキオさん自身を新聞だと思ってみんなで一緒に踊り、2日間のワークショップを終えました。

実施後の子どもたちや職員の方のアンケートには、次のような声が寄せられました。


●子どもたちより

・言葉ではなく、身体で自分の気持ちや考えを表すというのがとても楽しかったです。

・エネルギーがそれぞれあることが分かったので、すごく神秘的な気持ちになれました。

・3回目、できるか分かりませんが会えたら、一緒にまた踊りたいです。

・音楽はあるけれど、リズムに合わせるたりすることなく自由に踊れることが印象に残っています。

・音やリズムに合わせるだけではなく、目や手で、感じることで、全身で楽しむことができました。

・一人ひとり“自分らしさ”を身体で表現していて、他の人を見るのも面白いと思いました。

 

●職員の方々より

・ペアになって動く活動では、その子の性格が表れているのを感じ、興味深かった。

・集団生活が苦手な子が、生き生きと参加しているのが印象的でした。

・笑顔で活動をすることで、より身体が動くことが分かったような発言があった。

・帰寮後の会話から、子どもたちがいろいろと刺激を受け、感じた様子が見てとれました。


 

終わった後には、バレーや野球の練習があると言っていた子どもたち。日頃から運動の機会はたくさんあるようですが、スポーツとはまた少し違ったダンスの面白さや心地良さが伝わっていたら良いなと思います。

子どもたちが、芸術、文化活動にふれて様々な表現方法を身に着けることが、生きる力を育むことにつながるという想いに共感してくださり、今回の活動を支えてくださった寄付者の皆様、そしてコープみらいと中央共同募金会の皆様に心より感謝申し上げます。

墨田区立の小学校・特別支援学級、1~6年生の子どもたちと取り組んだ、水越朋さん(振付家・ダンサー)とのワークショップをご紹介します。

「さまざまな想いや想像力を持っていて、秘めたものがある子たちだが、それを表に出す手段をあまり知らないので、いろんな表現する方法を体感してほしい」
そんな想いでワークショップを申し込んでくださった先生。学芸会では『11ぴきのねこ』(作:馬場のぼる)に取り組むことが決まり、みんなの良さを生かした作品づくりに向けて模索しているところでした。

 

アシスタントの内海正考さん(ダンサー)と共に、普段意識したことのない自分の身体について目を向ける、発見とひらめきの2日間となりました。

1日目、少し緊張した表情で体育館にやってきた子どもたち。
まずは水越さんと内海さんの動きを真似してみることからスタートです。
タテとヨコに身体をぐーんと伸ばして、ぎゅっと縮んでみたり、あらゆる動きを見よう見まねでやってみます。

左右の腕を時計の針のように開き
「これは何時?」「3時!」、「じゃあこれは?」「8時!」
と水越さんの声掛けに、みんな元気に答えていきます。
身体を通したコミュニケーションの中で、頬が緩み、どんどん自由になっていく子どもたち。

「手には何がある?指でどんな形ができる?」という問いかけに、各々がじっくりと自分の手を眺めます。

全員の指を繋げて大きな輪をつくり、グネグネ動かしてイソギンチャクのようにしてみたり、ピースにして星形をつくったり、これもできそう!あれもできそう!と、子どもたちから出たアイデアをみんなでやってみました。

2日目は動物の真似から始まり、水の中の生物、太陽や氷といった物質をイメージして動きました。 「赤の踊り!」と、水越さんからの抽象的な注文にも自然と身体が反応し、青、緑、黄とさまざまな色になっていきます。

トンネルづくりでは、大人が作ったあらゆる形のトンネルを、子どもたちがくぐっていきました。 今度は子どもがトンネル役。先生たちが身体を縮こまらせながらクネクネと芋虫のように通る姿は愉快で、子どもたちからも笑みがこぼれます。

ホワイトボードの前に集合すると、2枚の絵が貼ってありました。
実はこれ、『11ぴきのねこ』に出てくる風景画。

「これからどちらかの絵を選んで踊ってみるね」 絵を見て感じたことを内海さんと水越さんが踊りで見せてくれました。

「どうだった?」
「平和に見えた」「意味わからない」「無人島っぽい」「ヒョウがいる」「次の踊りがみたい」
次々と子どもたちから感想が出てきました。
「意味わからなくてもいいんだよ」「見たいって思うことは大切なこと」と、子どもたちの気持ちに丁寧に向き合う水越さん。

「今度はみんなでやってみよう!」
さっきとは違う2枚の絵を見せ、自分が踊ってみたい絵のグループに分かれました。
まずは観察。絵を回して見方を変えると、見えてくるものが変わってくる不思議さ。

想像力が膨らんだところで、グループで踊りを見せ合いました。
堂々と1人で踊る子やペアになって踊る子、急に人に見られると緊張してしまう子もいましたが、ちいさな動きの中にも美しさを感じる瞬間がたくさんありました。
「恥ずかしくて動きたくないってことは大事。心と身体を一緒にさせているからね。」
水越さんが優しく語りかけます。
お互いに拍手を送り、感想を伝え合う姿は生き生きとしていました。

最後はみんなでフリーダンス。
音楽に合わせて体育館をのびのびと動き回って、2日間のワークショップを終えました。

先生との振り返りでは「普段は自信がなくてみんなの前に出ることが難しい児童が、笑顔で身体表現していたり、話すことが難しい児童が大きな声を出して、声に合わせて動いたりする姿が見られた」という感想をいただきました。

子どもたちの内に秘めているものをどうアウトプットさせるか悩んでいた先生。
「やらないという選択肢をあえて言葉にして認めることで安心感を持ち、より児童の自己肯定感が高まった」と、目を輝やかせながらおっしゃっていました。

さぁ、これからどんな『11ぴきのねこ』が誕生するのでしょうか。
たくさんのアイデアが詰まった、ワクワクする香りが漂ってきますね。


このワークショップは、花王ハートポケット倶楽部の協賛をいただいて実施しました。