石坂亥士さん(神楽太鼓演奏家・踊るパーカッショニスト)と少年院にいる14~16歳くらいの男の子たち20人とのワークショップを行いました。
社会福祉法人中央共同募金会「赤い羽根福祉基金」の助成を受けて実施した、音楽ワークショップの様子をご紹介します。

珍しい民族楽器がズラリと並ぶ体育館で、ワークショップはスタート。何が始まるのかと、子どもたちのソワソワした空気の中、トーキングドラム(西アフリカの太鼓)を鳴らしながら石坂さんが登場しました。

「この太鼓は、どこの国の楽器だと思う?」という問いかけに「ジャマイカ」「ガーナ」「アフリカ」など、考えながら手を挙げて答えてくれる子どもたち。音を鳴らすと、その迫力に思わず、お~!と驚く姿もありました。
「そんなにかたくならなくていいよ」と、まずは石坂さんの叩くリズムにのせて、ジャンプをしたり自由にステップを踏んだりして、身体をほぐしていきます。

「自由に楽器をさわっていいよ」という石坂さんの声掛けに、それぞれ気になる楽器を手に取る子どもたち。小物楽器を一つ一つさわってみる子もいれば、一つの太鼓をずっと奏でている子、音階を見つけてカエルのうたを演奏している子もいました。

子どもたちを見渡しながら、ジェンベ(西アフリカの太鼓)を奏でている石坂さんのもとに、1人、また1人と、同じくジェンベを持った子どもたちが集い、並んでリズムを合わせる姿も。そこにバラフォン(西アフリカの木琴)を持った子も加わり、言葉を交わさずとも、音のコミュニケーションが生まれていました。

「グループで即興演奏をしてみよう。始まりと終わりは、自分たちで決めるんだよ。」という石坂さんの提案に合わせて、5人ずつのグループに分かれ、それぞれ演奏したい楽器を持ち寄った子どもたち。話し合いなどないまま、いきなり本番の即興演奏に、お互いに自分のタイミングで、みんな思い切って音を鳴らしてくれました。
「引き際が大事。」「音が自分の中に入っている感じだから、もっと外に感覚を広げるといいよ。」といった石坂さんの言葉とともに、探り探りだった子どもたちの演奏も、堂々としたものに変化していきます。

最後はまた、みんなで自由に楽器を鳴らそう!はじめよりも、身体の動きが開放的になっている子も増え、楽器を鳴らしながら石坂さんと向き合って踊り始める子や、色んな音の鳴らし方を試してみる子も。

そんな姿につられるように、子ども同士でも向き合ってステップを踏んでみたり、何人かで集まってセッションを楽しむ様子もあちらこちらに見られました。

子どもたちの自由で開放的なリズムが鳴り響いていた、あっという間の90分。
ワークショップ終了後、子どもたちが書いてくれた感想文をいくつか紹介します。


・触ったことも見たこともないような楽器ばかりでとてもワクワクしました。実際に使ってみると、物によって様々な音が出ておもしろかったですし、楽しかったです。少年院を出院して社会に戻っても、辛い時は音楽を聴こうと思いました。

・多分今後少年院ではあじわえない楽しさでしたし、あんなに大人の人と楽しく遊ぶ事が今までなかったので、とても楽しかったです。

・今までにない楽しみや嬉しさが楽器を通して表現できたり、自分の中にたまっているものを全て出せるような感じで、少年院でやれて良かったなと思いました。

・楽器を通して心に余裕が出来た気がします。今まであまり興味のなかったものも深堀りすると案外好きになる事を知り、出院後も色々な物に目を向けてみようと思うようになりました。


本当に自由な空間の中、様々な表現をみせてくれた子どもたち。
参加してくださった先生からは、子どもたちの意外な一面が見られたとのご感想もいただきました。
たった数時間の出来事ですが、音楽を通して感じた楽しさや、ワクワクしながら世界が広がっていく感覚など、子どもたちの中に残り続けてくれたらいいなと思います。

最後になりますが、子どもたちの様々な表現を引き出してくださった石坂さん、そして、子どもたちが安全に楽しく参加できるようご協力くださった少年院の先生方に心より感謝申し上げます。

【助成】社会福祉法人中央共同募金会「赤い羽根福祉基金」