積水ハウス株式会社/積水ハウスマッチングプログラムからのご支援を受け、2024年6月~2025年2月までの計10回、東京都清瀬市にある2つの児童養護施設で暮らす子どもたちが交流するワークショップを実施しました。
実施に際しては、積水ハウス株式会社の従業員様発案のアイデアと、当団体の活動とを融合して行いました。
アーティストの棚川寛子さん(舞台音楽家)、アシスタントの井上貴子さん(俳優)、加藤幸夫さん(俳優)、黒木佳奈(俳優)さん、佐藤円さん(俳優)と子どもたちで取り組んだワークショップの様子を紹介します。

「自分たちの夢の街をつくろう」をテーマに、棚川寛子さんと子どもたちのワークショップがスタートしました。ワークショップの初日、アーティストから子どもたちに、どんな作品をつくってみたいか問いかけると、海や川、建物といった街並みがひとつずつ登場して、最後に街が完成する、といったアイデアを子どもたちが提案してくれました。このアイデアをもとに、「自分たちの夢の街」には、どんな建物があって、周りにはどんな自然が広がっているのか考えていきました。

2日目からは、「夢の街」づくりがスタート。まずは、「自分が住んでみたい理想の家」を考えてみました。工作用紙1枚を自分の土地として、家の大きさや庭の広さなどをイメージしてから、色画用紙などを使って、「理想の家」をつくっていきました。工作用紙を切ったり折り曲げたりして家の外壁や屋根をつくったり、外壁をくり抜いてカラーセロファンを貼り付けてステンドグラスのような窓をつくったり…

外観のみならず、家の中にもこだわって、ベッドや机をつくって置いたり、庭に大きな木や池をつくってみたり… 試行錯誤を繰り返しながら、自分が住んでみたい「理想の家」ができ上っていきました。

「理想の家」ができたら、今度は、みんなの住む街づくり。グループに分かれて、自分たちの街にどんな建物があって、周りにはどんな自然が広がっているかを考えながら、街をつくっていきました。海づくりのグループは、海の上にペンギンの乗った氷山を浮かべたり、釣り竿をつくって海釣りをして遊んだりしました。動物園のグループは、ゾウやウサギ、キリンやカエルといった生き物たちを、折り紙でひとつひとつ丁寧につくっていきました。鉄道づくりのグループは、線路が川にまたがる様子をみて、「橋をつくらなきゃ!」と急遽鉄橋を作製。子どもたちのアイデアと共に、街並みが広がっていきました。

また、今回はワークショップの期間中に、子どもたちがプロのお芝居を鑑賞する機会をつくることを考えました。アーティストの棚川寛子さんが、劇場へ来ることが難しい人たちにも舞台の感動や俳優のエネルギーを伝えたいという思いではじめた「テーブルシアター」を施設にお招きして、ノルウェーの昔話『三びきのやぎのがらがらどん』(演出:棚川寛子、脚本:森山真利恵、美術:深沢襟、出演:三島景太、森山冬子、吉見亮)を上演。いつもワークショップをしている会場で、ワークショップメンバー以外の施設の子どもたちも一緒に、プロの演技を間近で観劇しました。上演後は、俳優たちとおしゃべりをしたり、舞台装置に触れてみたり、作品の中で使われた楽器を演奏してみたりして楽しみました。

最終日は、施設の職員や他の子どもたちなどに、「自分たちの夢の街」を紹介する発表会です。発表のタイトルは『My Dream Town, My Dream House!!』 最初に、ワークショップメンバーがグループ毎につくった海や川、動物園や鉄道が登場。レポーター役の子どもたちが、小型カメラで撮影した映像をスクリーンに投影しながら、司会者役のアーティストの質問に答えながら、それぞれのこだわりポイントを紹介しました。

続けて、子どもたちが一人ずつ順番に「自分の理想の家」を持って登場。司会者役をアーティストから子どもにバトンタッチして、インタビュー形式で、自分の家のお気に入りポイントを紹介していきました。インタビューの内容は、司会者役の子ども自身が考えてくれました。(アドリブ満載でした)。

最後にアーティストや施設の職員・ボランティアスタッフなど大人たちがつくった建物もみんなで並べて「自分たちの夢の街」が完成。みんなで楽器演奏して発表会は終了しました。終演後は、観客に街の中をお散歩してもらいながら、改めて、子どもたちがつくり上げた街並みを鑑賞してもらいました。

発表会が終わったあと、自分のつくった家のみならず、アーティストや職員の方々がつくった家なども、両手いっぱいに抱えて、大切に部屋に持って帰る子どもたちの姿がありました。

発表後の振り返りでは、施設の職員の方々から、普段の生活の中では物静かな子どもが、ワークショップでは嬉々として積極的に活動している姿があることや、家づくりなどに際して、子どもたちが自分のこだわりを全開にして、伸び伸びと制作活動に取り組めたことへの感謝が述べられました。また、ワークショップでは、家づくり以外にも、ハンカチ落としをして思いっきり遊んだり、ジェスチャーゲームでお互いの表現を楽しみ合ったりしながら、2つの児童養護施設の子どもたちの関係性を育んできましたが、回を重ねるにつれて、違う施設の子ども同士で話しあったり、お互いに協力しながら制作に取り組む姿がみられたことが嬉しかった、との声も聞かれました。今回、家づくりをしながら、アーティストと子どもたち、そして、子どもたち同士が、好きな遊びや音楽のことなど、とりとめもないおしゃべりをたくさんしました。何気ない会話でしたが、そうした時間をみんなで一緒に過ごせたことも、今回のワークショップの宝物になったように思います。

最後になりましたが、子どもたちの意見や想いを真摯に受け止めながらワークショップを進めてくださったアーティストの棚川さんとアシスタントの皆様、子どもたちに寄り添いながらワークショップを支えてくださった施設の職員とボランティアスタッフの皆様、そして、ワークショップをご支援いただきました積水ハウス株式会社と積水ハウスグループの従業員の皆様に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました!!


【助成】積水ハウス株式会社

2024年度「コープみらい×中央共同募金会『子ども・子育て支援助成~生活に困難がある子どもやその家族への支援活動を応援!〜』の助成を受けて実施した、2つめの児童自立支援施設でのワークショップをレポートします。(1施設目のレポートはこちら

25名程度の中高生たちを対象に、パーカッショニストの関根真理さんとURIさん、ギタリストの小沢あきさんと、3日間のワークショップを実施しました。

施設の中で普段から音楽の授業はあるけれど、合唱が中心で楽器にふれる機会が少ないこと、子どもたちは音楽が好きな子もいて、ギターやピアノに興味がある子がいること、加えて施設の中で行われる演芸会で音楽的な出し物をする子たちもいるということで、たくさんの楽器にふれて、音楽を楽しむ時間をつくっていくことにしました。

1日目は、アーティストが用意した打楽器のほか、施設のドラムなども借りて、まずは子どもたちに楽器の楽しさを体験してもらう回となりました。2日目は、打楽器の中でもジャンベ、ジュンジュン、カウベルなどのパートに分かれて「クク(KUKU)」という西アフリカのリズムを元にしたパーカッションアンサンブルに挑戦。後半は各々が取り組みたい楽器(ギター、ドラム、小物パーカッション)に分かれてリズム演奏や、イメージに合わせた即興演奏などに取り組みました。

3日目は、全員で演奏する「クク」のリズムアンサンブルに、ギター、ドラム、小物パーカッションチームそれぞれの演奏コーナーを加えて、ある島の夜のお祭りのように構成して合奏しました。

合奏の冒頭は、打楽器チームが鳴らす不思議な音からスタート。ジャングルの奥から聞こえてきそうな、動物の鳴き声のような不思議な音が鳴り始め、次第にみんなのククのリズムが重なっていきました。ある子が見つけた楽器は、クイーカと言って筒の中にある棒を湿った布で擦ることで鳴き声のような音が出ました。ククのリズムの間には、アーティストの指揮に合わせてパートごとに演奏を止める、また加わるなど、パートが変化することでリズムの聞こえ方が変わることも楽しみました。

ギターチームのコーナー『ギターの森』では、GとEmのコードを使った演奏を披露してくれました。短い練習時間でしたが、職員の中にもギターが弾ける方がいて、一緒に練習した成果を、他の子どもたちも興味を持って聞いてくれていました。

そしてドラムチームは『ドラムの丘』と題して、アーティストと一緒に、2人ずつドラムの即興演奏を披露。練習の時に、リズムをきちんと演奏しようとすると技術的に難しい部分もあり意気消沈する姿も見られましたが、決まったリズムではなく、自分が演奏したいように鳴らしてみることも取り入れて、一人ひとりが違うリズムを聞かせてくれました。そして最後には、3つのドラムを全員で演奏して小物パーカッションチームへバトンタッチ。

 

再び登場した小物パーカッションチームが『音の魔術師』と題して、それぞれが選んだ好きな楽器を使いながら、カリンバという楽器でマクドナルドのポテトができあがる時のメロディーを奏でたり、ソロで歌を歌ってくれたり、寸劇も織り交ぜて場を盛り上げてくれました。

最後にはまた全員でククのリズムを奏でながらフィナーレ。いつの間にか50分間という超大作の合奏ができあがりました。3日間という短い時間でしたが、楽器やリズムとの出会いを通して、相手の音を聞きながらリズムを合わせたり、他チームの演奏に耳を傾けたりしながら、全員の音楽が重なり合う心地よさを感じる時間になりました。

実施後の子どもたちや職員の方のアンケートの一部をご紹介します。


●子どもたちより

・やっぱりドラムは想像以上に難しかったけれど、それを乗り越えられたからこそ、さらに楽しかったと思います。

・まとめると、すごく楽しかった。みんなの音が合わさっていくのがゾワゾワした。

・寮生や先生方と一緒に音でコミュニケーションを取ったり、リズムに乗って演奏などを行ったことが楽しかったです。

・印象的なことは、どの回もとても賑やかだったことです。1~3回目の中でも、やっぱり最後は全体が一丸となって演奏や出し物をした3回目が一番思い出に残っています!

・ミスしても失敗してもいいということを、先生方から学べて、自由にやる時、何かを表現する時は、正解はないんだということを知る機会になったと思います。

 

●職員の方々より

・楽器に触れる貴重な経験だけではなく、全体で一つの作品をつくり上げていく過程と、その出来映えが本当に素晴らしかったです。

・音楽や楽器への興味、関心が高まったと思います。音符や楽譜が読めなくても演奏する経験ができたことは、とても良いものとなったと思います。

・今後もいろいろな芸術にふれる機会をつくりたいと思います。言葉や行動だけではない、いろいろな自己表現方法を学んで欲しいと思っています。とても良い機会をいただきました。

・歌うことや人前で発表することが苦手な子どもが、前に出て元気よく参加していたのが印象的でした。

・全体的に子どもたちは飲み込みが早く、大人では覚えるのに困難そうにみえるリズムにも上手に合わせていたのが印象的だった。


文化芸術にもいろいろな分野があるので、各施設の要望や子どもたちが興味、関心があることに応じたワークショップをつくっていくことが大切だなと改めて思いました。また、音楽に限らず、これからも継続して施設に関わることで、表現にもいろいろな方法があることを体験してもらえると良いな、とも思っています。

最後になりましたが、様々な場にいる子どもたちに、表現活動の場を届けることに賛同してくださり、ご支援いただいた寄付者の皆様、そしてコープみらいと中央共同募金会の皆様に心より感謝申し上げます。