雨が続いたり風が強かったり、少し天候が不安定な今年の春。日曜日も時折雨のぱらつく曇天でしたが、グリグリのワークデーを行いました。

天候のせいか参加メンバーは少なめでしたが、畑は来るべき夏に備えてすべき作業がいろいろあり、皆で協力しながら畑活動に勤しみました。この日にやっておきたいことは黒板に書きだしておき、メンバーが各自やりたい事を選択してそれぞれの場所へ向かいます。随分前に植えたじゃがいもがなかなか芽を出さず、この日も芽が出ていなければ掘り起こして種イモが腐っていないか確認した方が良い、ということで見に行ってみたらば、無事に育っていて一安心。今年は冬が長かったので植物の成長もゆっくりなのでしょうか。
それから、夏にむけてミニトマト畑を準備するべく、冬の間に植えたホウレンソウや二十日大根の収穫もしました。ピンク、赤、紫などきれいな色をした二十日大根に、やわらかくそのまま食べられそうなほうれん草も大量に収穫できました。

収穫の後は、カニ殻とくん炭を混ぜ込んで土を耕したり、それぞれの場所で雑草を抜いたり、レモンやブラックベリーには花がつくように、周りの土に堆肥を混ぜてワラをかぶせておきました。
お昼には、大量に収穫した野菜たちを子どもたちも手伝って調理です。二十日大根はそのままでも食べられますが、ホウレンソウはハムとコーンを加えて炒めものにしました。青々とした野菜が並ぶテーブルを皆で囲み、食事のお伴には、ハーブ部のメンバーが今回は少し趣向を変えてほうじ茶を淹れてくれました。

お昼ごはんの後には、午前中にできなかった、緑のカーテンのお豆たちを収穫しました。ソラマメやさやいんげんの手入れの方法を調べるのは次回までの課題です。

そして、引き続き雑草も抜いて、チューリップなど埋もれ気味だった春の花たちも、はっきり姿を見えるようにして、かぼちゃの種も植えました。

いちごも、クローバーに埋もれていた所もあったので、周りを少しすっきりさせました。そして、何気なく四つ葉を探していたら、思いのほかたくさん見つかりました!中には五つ葉など変わり種も。子どもたちの見つけたクローバーがお母さんたちの服を飾って、なんだかとても幸せな光景でした。

また、男の子兄弟は造形的な作業も頑張ってくれました。シーズン毎に変化する畑の地図を作るべく、巨大な白いシートに絵を描いてくれたり、メンバー同士がお互いの顔と名前を覚えて交流しやすくなるように、写真を使った名札作りも始めました。

カメラマンになってくれた男の子は、一枚一枚写真が浮かび上がってくるのを確認して、モデルとなった人には仕上がりもちゃんと見せてくれます。中には眼鏡をモチーフにしたアートな作品も紛れていました。
存命が危ぶまれたホップも復活していましたし、これから夏に向けて畑が賑やかになっていくのが楽しみな一日となりました。

120304 031a.jpg もう3月だというのに6度くらいまでしかない気温があがらないという予報。今日は集まったメンバーで相談しながらやることを考えようか、という感じでゆるくスタートしました。最初に集まったのは、3組くらい。ちょうど小さい子どもたちが多かったので、カブさんが持ってきてくれたじゃがいも(グランドペチカ)を植えるため、種いもをカットしてあげました。よく育つためには最低40gの重量が必要なので重さを量り、大きいものは二等分に、小さいものはそのまま植えることにしました。寒い中、飛び込みで体験に来てくれた親子も一緒にやってくれました。
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切ったじゃがいもを持って外へ。グリグリの兄貴分Tくんと弟のKくんがちょうどいいタイミングで来たので、まずは畑を思いっきり掘り返してもらいました。
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やや思いっきりがよすぎるので、小さい子どもたちはちょっと避難しておき(笑)、固くなった土がほぐれてからやってね!ということでしばらく待ちの態勢でいてもらいました。そして、いざ出番が来たらみんなでサクサク耕し、その後種いもを植えました。
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気温はまだ真冬のようでしたが、畑の土の中はじわじわと春になっていて、この日はけっこう野菜を収穫することができました。まずはカリフラワー!240gのミニサイズ。でも、びっちり育っていてなかなか立派です。
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スティックセニョール(ブロッコリー)とサラダホウレンソウ、ターサイもできていました。ターサイはコサージュみたい!
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採れた野菜は小学生女子二人がスープにしてくれて、ランチタイムにいただきました♪ めっちゃおいしい!
ちびっこたちも「おいしいおいしい」とおかわりまでしてました。
グリグリの野菜は小さいけど、甘味とうまみは凝縮されているのです!
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お昼を食べた後は、夏までの計画について今日揃ったメンバーで相談。「何を育てるか」はもちろん一番大きな論点ですが、ズッキーニの受粉を成功させるためにはどうしようか?受粉係が必要?とか、かぼちゃはぶら下げて育てよう!とか、失敗しない努力もいるねーーーと話も。結論は出なかったけど、これからも話していきたいですね。今年のグリグリ、少し成長できるかな?
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にしすがも創造舎の校庭で畑づくりをしているグリグリでは、5年ほど前から剪定した野菜の葉や茎、刈り取った雑草などを堆肥化してきました。畑で育った植物は畑に還してあげようという、エコ意識の高い人なら実践していることをやってきたわけですが、グリグリは特別そういう人たちの集まりではないので、堆肥にすることがどういうことなのか、はっきりわからずにやっていたメンバーもいたかもしれません。
5年間働いてきた初代堆肥ボックスが、古くてお役目終了となったため、この度、グリグリでは畑に並ぶぶどう棚や石がまの新しい仲間として、楽しい堆肥ボックスにつくることになりました。そこで、美術家・水内貴英さんに来てもらって、ワークショップを開催してもらいました。題して「虫たちのマンション 堆肥ボックスづくりワークショップ」!
まず最初に、堆肥についてよく知っておこうということで、水内さんは堆肥にはたくさんの「虫」が住んでいることに着目して、ワークショップを進めてくれました。堆肥は何からできているのか、堆肥の中ではどのような虫たちが活躍しているのか、色々な虫や菌などの写真を見せてもらいながら学びました。
グリグリの子どもたちは(みんなではないですが)虫好きが多く、水内さんが堆肥に暮らす虫たちを紹介すると、「こがねむし!」「ハエ!」「トビ虫!」と大きな声を出して参加していました。そして、一通りお勉強したところで、
水内さんが「堆肥は、こんなにたくさんの虫が住んでいるから、虫のマンションなんだよね」というと、小さい子たちはニッコリ。大きい子たちは「なるほど!」と思ったようです。ここから造形の始まりです。
子どもたちは、堆肥ボックスの外側に貼りめぐらす白いビニールシートの上に、虫たちのマンションを描いていきます。色々な虫の写真を見せてもらった後なので、みんなそれぞれ頭の中にたくさんの虫のイメージができているようで、どんどん虫を描いていきます。知っている虫から空想上の虫、窓越しに座っているかわいい虫、虫用のエレベーター、悪そう~な虫など、本当に色々です。
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子どもたちがこうして絵を描いている間、大人メンバーは外で堆肥ボックスの設営を行いました。4本の太い杭を打ち込んだり、金網を張って釘やワイヤーで留めたり、単純な構造の割には力と手先の器用さが求められる作業でしたが、中学生メンバーが主役になって手際よく作業をしてくれました。気がつくと、グリグリきってのやんちゃキッズの男子も集まり、設営作業を手伝ってくれました。「いつもより楽だね~」と大人から笑い声が聞こえるほど、子どもたちの活躍が目立ちました。
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120219 093a.jpg <隙をみては、いつものごとくダムづくりにいそしむ男子も・・・。>
午前11時からスタートした作業が完成したのは午後2時ごろ。子どもたちの描いた虫たちのマンションで埋め尽くされたシートを張ると、あまりのかわいさに「しばらく飾っておきたいねー!」「堆肥入れるのもったいない!」という
声があちこちから聞こえました。虫マンションの絵は、よく見るとマンションに留まらず虫たちの「街」になっていて、虫のトラックが走っていたり、働きバチがあちこち飛んでいたりして、本当に賑やかなものになりました。
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グリグリの活動日は月に2回ほどですが、畑に入ることはいつでもできますので、お近くにお越しの際はぜひこのかわいい堆肥ボックスを一目見におたち寄りください!

今年度4回目、久しぶりの2年1組親子向けワークショップは、踊り手・美術家の東山佳永(とうやまかえ)さんをお迎えして、『音とからだでダンスを描こう』という、ダンスに音楽、造形的な要素も加わった楽しい内容でした。音楽は斉藤紘良さん(作曲家・保育園園長)、アシスタントには小林直子さんにお越しいただきました。
みんなで雲の上に行き、そこでパーティーをしよう!というコンセプトで、会場となった教室には雲が設えられていたり、窓には鳥や気球の絵が描かれていました。

ワークショップの始まりは、東山さんがダンスを披露して下さいました。風船を持って軽やかに舞う東山さんの姿を、子どもも大人も息をのんで見つめます。
さて、ダンスの後はまず参加者同士のご挨拶も兼ねて、風船を使ったワークです。円になって手をつなぎ、手を離さずに風船をパスしていきます。風船も1つから2つ、3つと数が増えます。声をかけたり、手をつないでる相手と呼吸を合わせてパスをつないでいきました。

その後、まず雲の上に行くには雲にならなければ、という事で、こすって温めた手で触れられると、その身体の部分から溶けていくというワークを行いました。一瞬で溶けてしまう子もいましたが、少しずつ、少しずつ身体が水になっていきます。

雲人間になった後は、みんなで雲の上に出発です。雲の上に行く方法は、ペアになった相手の顔や頭にタッチ、そっとくるくる回して連れて行ってあげます。お父さんやお母さんの手のひらに頭を預けて目をつぶりながら気持ちよさそうにしている子どもたち。家でもできそうなワークです。

さてさて、雲の上に到着したものの、雲の上は真っ白な世界。パーティをするには少し淋しいようです。そこで、斉藤さんの奏でる楽器の音に合わせて、雲に絵を描いていきました。楽器の音のイメージを、黒板に描かれた雲や吊るされた雲、ガラスにだって描いちゃいます。ジグザグの線やグルグルの線、斉藤さんの鳴らす楽器の音に目と耳を傾け、雲が思い思いの模様で彩られていきました。

続いては自分の身体を使っても描いてみました。指、肘、かかと、つま先など、身体の一部分を意識して空中に音の模様を描いていきます。するとそれが一人ひとりのダンスにつながっていきます。そうして生まれたダンスも活かしつつ、続いては親子毎に楽器を一つ渡し、楽器の音に合わせたポーズと振りを考えました。できた振りはみんなの前で発表、照れる子もいますが、お父さんお母さん、アーティストも一緒にサポートします。

発表が終わった子には、雨の降っている雲からパーティができるように雨を摘んでもらいました。摘んだ雨を小林さんへ届けてもらいます。すると、東山さんが風船のついた雨を持ってきました。パーティーをするにはクリスマスツリーが必要ということで、みんなでカウントダウン!東山さんが手を離すとスルスルッと雨の束が立ち上がってツリーの出来上がり!子どもたちは一斉にツリーの中に吸い込まれていきました。秘密基地のような空間はいつの時代も子どもの心を釘づけにするようです。

でも、ただのツリーではパーティーには不十分、教室に散らばった雨の粒や靴下に雨傘、透明折り紙で作られた様々な形を集めて、子どもたちにツリーの飾り付けをお願いしました。

一瞬で素敵なツリーが出来上った後は、みんなでツリーを囲み、簡単なステップでフォークダンス!途中みんなが考えた音のダンスも混ぜながら、ダンスパーティーを開きました。

時間はあっという間に過ぎて、パーティーを楽しんでいるうちに、だんだん夜がやってきて、みんな寝る時間になってしまいました。ひと眠りすると、何やら朝の音が聞こえてきます。眠って休めた身体を、少しほぐして起き上がったところで、ワークショップの終了です。雲の上でのパーティーと言う物語をベースに、ダンスも音も造形も、様々な要素を満喫した一日となりました。

師走初日の寒い日に、勝部ち子さんによるからだあそびワークショップが開催されました。
勝部さん 「今日は雨で寒いですが、みんな元気ですか?雨とか、寒いとか、みんなには関係ないか?!」
子どもたち 「かんけいなーい!」
今日も元気な声がホールに響きました。勝部さんがこの園に来るのはちょうど1週間ぶりです。
前回と同様、アシスタントのしょうこさんと一緒に来園し、この日もまず最初はみんなの名前を呼び合うことから始めました。大きな輪になって座り、「○○ちゃーん(くん)」とみんなで一斉に一人ずつ名前を呼びます。名前を呼ばれた子はちょっぴりはにかんでみたり、ポーズを決めてみたり。先生の名前ももちろん呼びます。勝部さんとしょうこさんも「ちこちゃーん」「しょうちゃーん」と、子どもたちと同じように呼んでもらいます。ちょっとしたことだけど、こうして一人ひとりの名前を大きな声で呼び合うことで、前回はお休みだった子も、ここで顔と名前を覚えてもらえたり、その場にいるみんなの気持ちがほぐれ、これから一緒にからだあそびをしようね、という一体感がでてくるのです。
紹介の後、まずは少しウォーミングアップしました。
勝部さんが幼児を対象に行うワークの中に、「ネコ」という名前のものがあるのですが、それは四つん這いになり、二人同時にゴロンと一回りしてからジャンプするというものです。着地するときは足音がたたないようにするのが「ネコみたい」ということで「ネコ」と呼んでいます。日頃からよく身体を動かしていると思われるこの園の子どもたちは、あそびの飲み込みが早く、静かに着地するジャンプも、とてもうまく飛ぶことができました。
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このあそびを紹介するとき、勝部さんが子どもたちに、「この動きは何を表現していると思う?」と聞いたところ、子どもたちからは、「うさぎ」「カメ」など色々な答えが返ってきました。勝部さんとしょうこさんが 「そうだね。それもあるね。」とどれも受け入れるように返事をしていると、一人の女の子が 「ほんとはどれが正解なの?」 と聞いたそうです。しょうこさんが 「どれも正解だよ」 と言うと、その女の子は少しきょとんとした顔をしていたそうです。
勝部さんのワークショップは、いつも子どもたちの年齢に見合ったワークを用意して来てくれますが、現場で子どもたちから出てくるアイディアを時には受け入れ、柔軟にシフトしていくこともあります。「こうしなくちゃいけないというのはない」 そのコンセプトが「ネコ」の件に如実に表れていましたが、きっと子どもたちは、知らず知らずのうちに今日のワークショップそのものが 「こうしなくちゃいけないというのはない」 のだということに気づいて行ったのではないでしょうか。
さて、いろいろな面白いからだあそびを取り入れたウォーミングアップが終わると、前回のワークショップで約束した「海」に行くことになりました。この「海」は勝部さんのワークの中で大人気のものです。
勝部さん 「これから海に行きたいと思います。今日は沖縄に行きます!」
子ども 「なんきょくがいいー!」 
なぜか「なんきょく」の大合唱が子どもたちがわきあがりました。
・・・しばらくたって・・・
しょうこさん 「今日行く海が決まりました。なんきょくです!」
子どもたち 「わーーーーい!!」 
子どもたちはおおはしゃぎでした。南極ブームなのでしょうか?理由はわかりませんが、南極行きが決まりました。
飛行機に乗ったあそびを通して南極に着くと、4人1組で波乗りをしました。横一列に3人が寝転がり、その上に一人が横たわります。下の3人がごろごろと転がると、上に乗った子も一緒に転がって、まるで海で波乗りをしているみたいなのです。これは”みんなで息を合わせて″転がることが大事で、お互いが相手の動きを感じ取りながら動くこと、動きながら友だちの身体にケアすることが必要な、実はちょっと高度な動きです。前回2人1組でやったことが活きて、今日はみんなとてもうまく波乗りができていましたが、中にはちょっと勝部さんに指導してもらいながらできたというグループもありました。
最後のワークは、海でつかまえた魚が体に入ってしまった!というあそびです。身体の中に魚が入ったらどんなことになるでしょう?そんなことをイメージして動くと、なんだか踊っているみたいになりました。魚はしょうこさんから勝部さんへ、勝部さんから先生へ、先生から子どもへとだんだんと移っていきます。魚が入ってしまった人は、手足や腰をゆらゆらさせて動きます。その動きがおもしろいのか、魚がはいっちゃった!というイメージがもうできているのか、子どもたちは大興奮で 「いつ自分のところに魚がくるだろう!」 という期待をもちながら待っています。待ちきれない子は飛びはねたり、奇声をあげたりして待っていました!子どもたちに魚がやってくると、待ちきれない子たちがみんな踊りだして、すごいエネルギーがさく裂しました。
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自己表現をしたい子たちが多いんだなぁ、とスタッフは感心したのですが、あとで聞いたら「大人しくて自分を出すのが苦手な子が多いんです」とのこと。え?!スタッフも、勝部さんもしょうこさんも、唖然としてしまいましたが、今日の 「こうしなくちゃいけないというのはない」 という雰囲気を感じ取って、子どもたちが表現できたのではないかと先生たちは受け取られたようです。自然に引き出された子どもの感覚に出会えた時間だったのですね。あとからしみじみとワークショップの力を実感させられました。
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勝部 ちこ(かつべ ちこ)/ダンサー・インプロバイザー
https://www.children-art.net/katsube_chiko/

街中がイルミネーションでキラキラ輝くこの季節、12月のグリグリワークデーは、畑活動に加えてクリスマス会も行いました。
まず午前中は畑の手入れです。先週緑のカーテンの植物を冬用に植え代えたので、カブさんが作ってくれた立札に子どもたちが植物の名前を書いていきました。キラキラの星が添えられて、花たちもより可愛らしく見えます。

その間、やんちゃな男の子たちはイモリを捕まえてきました!随分大きなイモリで何となく愛らしく、子どもたちの自慢げな顔に思わずシャッターを押してしまいました。

さて、畑の方では、秋の終わりに植えた野菜たちの間引きを行いました。春菊、日野菜、ほうれん草にラディッシュなどぎっしり若葉が育っているので、たくさん間引きをして、間引いたものはサラダの材料にしました。ラディッシュは既に大きく育っているものもあり美味しそうでした。

そうしているうちに、クリスマス会のメインディッシュ、ターキーが登場しました!今年は7kgのターキーを用意、石釜係もベテランの方にお願いして、万全の態勢で挑みました。みんなも作業の手を止めてワラワラと石釜の周りに集まりターキーの行方を見守ります。しっかり中まで火が通るように、見事に蒔で閉じられていく石釜を見つめていました。

他方パパさんチームは、せっせと柵作りをしていました。ニスを塗ってペンキを塗って、グリーン&ピンクの、グリグリらしい柵が次々にできていきました。子どもも一人前にのこぎりを使って作業に参加です。

間引きが終わった子どもたちは、何か仕事はないかと探して、ニラの種の収穫や、バラのアーチの周りにいつの間にか育っていた人参を収穫しました。

時には青虫を観察して日記に書きとめたり、ず~っと石釜の番をしている子がいたり、子どもたちもそれぞれのやりたい事を見つけて取り組んでいました。はつか大根を植えた男の子は、「はつか3兄弟」なんて可愛い立札を立てていたり…

日が傾き始める頃にはクリスマスの飾り付けも始まります。カモカフェのスタッフも一緒に、ライトを飾ったり、おもちゃかぼちゃを使って素敵な飾りを付けてくれました。猿のように身軽な男の子たちも手伝って、教室もモールでキラキラになっていきます。

クッキング部隊は、パスタにパエリア、ピザなどなど、お母さんたちが大活躍です。包丁の使い方を教えてもらったり、ピザの具を乗せたり、もちろん子どもたちも手伝います。

気付けばあっという間に日も沈み、クリスマス会が始まる頃には本当にたくさんの方が来てくれました。久しぶりに会うメンバーとの話もはずみます。出来あがったターキーは一瞬で無くなりましたが、それもそのはず、本当に柔らかくて美味しかったです!パスタやパエリアも大好評で、ボーっとしていると食べ損ねてしまうくらいでした。

お待ちかねのプレゼント交換では、大きな円を作り、歌に合わせてプレゼントを横の人に回していきます。子どもたちからの「もう1曲」というリクエストを何回か経て、最終的にプレゼントが決定です!早速中身を開けてみては見せ合いっこ。一番盛り上がる瞬間でした。

最後はご飯を食べつつ、三々五々に帰っていきましたが、残れる人は残って、夜が更けるまで楽しいおしゃべりは続きました…

保育園の5歳児クラスで行われた、谷山恭子さん(美術家)のワークショップをご紹介します。会場になったのは、六角形の素敵なホールです。ダイナミックな造形活動で、一人一人の作品でもあり、みんなで一つの作品にもなるような内容を、との先生からのリクエスト。今回は、木を組んだ土台の上に段ボールなど様々な素材で装飾して、みんなで大きな木を作る、という内容でした。子どもたちの人数と、2日間実施ということで、大きな土台と、少し小さな土台と2つの木を作りました。

1日目、ホールに入ってくるなり、木組みを見て子どもたちは「ワーッ」と歓声を上げていました。はやる気持ちを抑えてまずはアーティストとご挨拶。その後はペンキの使い方や、何を作るか簡単に説明をして制作スタートです。
ペンキの説明を聞いたらまずは全員ペンキを塗ろうとしますが、大混雑のため、段ボールカッターで段ボール切りに挑戦する子もチラホラ。ペンキはいつも子どもたちの心を魅了してやまないのですが、今回も予想通り?の人気ぶり。1日目は色を混ぜずに一色ずつ塗っていきました。2日目は色を混ぜても良い事を伝えると、それはそれで大興奮。2日間で、ローラーだけでなく手形をする子や、葉っぱや空き箱、いろいろな物に色を塗っていく子など様々な展開が見られました。

一方では、工作的な作業に夢中になる子もいます。カラーガムテープや風船、アルミホイルを利用して、鳥に船、ロボット、リースなどそれぞれが丁寧に作品を作っていました。直接は木に関係ないように見える作品でも、木と木をつなぐ紐に吊るしたり、木に貼付けたりする事で、全体としては立派に一つの作品になっていきます。

木に飾り付けていく段階では、大きな布を作って秘密基地を形作って行く男の子たちも。布で覆われた狭い空間の中で何やら作戦会議でしょうか。使う素材は様々ですが、今回はアーティストが用意した物以外にも、保護者の方や先生にもご協力いただき、面白い実のなる木々や落ち葉など、自然の素材も活用しました。

梱包材のプチプチは入り口のカーテンに、松ぼっくりも飾りに、アルミホイルは自由自在に形を変えられるので、子どものイメージの中では宝物にもなります。プチプチにペンキを塗るというアイデアも広がりました。

木の回りに張った紐にも次々に作品がつり下げられてどんどん賑やかになっていきました。「楽しい!」「次は〇〇作る!」と先生やスタッフに説明しながら作ってくれる子、ほとんど話さず黙々と作業に没頭する子、とりあえず木の中に入ってキャンプごっこをして楽しんでいる子、一人ひとりが、それぞれの楽しみ方を見つけていました。それと同時に相談しながら一つのものを作ったり、アーティストに相談したり、様々なコミュニケーションも生まれます。

そして楽しい制作の時間はあっと言う間に過ぎていきました。まだまだ作りたい物がある様子の子もいましたが、簡単に自分が使った道具などを片付けて集まりました。そして、クリスマスも近いということで木に照明を仕込んでおいたので、点灯式を行いました!ライトが付くと、「中に入りた~い!」とさらに盛り上がる子どもたち。でもその前に、自分が作ったものを発表してもらいました。みんないくつも作品を作っていましたが、一番思い入れの強いものから紹介されていきます。アーティストも一言ずつ作品にコメントを添えました。

発表後は、少し時間が余ったので、お待ちかね、みんなで中に入って遊びました!「遊んでいいよ~!」のかけ声に「キャ~!」と駆け出す子どもたち。あまりの勢いに、「小さい方は3人までだよ~。」とアーティストが声をかけ、みんなにもルールを守ってもらいます。でも大きな方には全員が入れてしまい記念撮影。みんなの嬉しそうな笑顔がとても可愛らしかったです。
「大きな木」というざっくりとしたテーマに、素材をふんだんに用意して環境を整えることで、子どもたちの創造力はどんどん広がって深まっていく。決まっていることと自由さが絶妙なバランスである事が、子どもたちを輝かせたように思います。撤去日までの数日間は、木の中でおやつを食べたり、他のクラスの子も遊んだり、園でもいろいろ活用して下さるとのことでした。先生からは、子どもたちが達成感を持って「作るのが楽しい。」と思えていた、との感想をいただきました。作る事を嫌がることは一度もなく、アイデアが尽きない子どもたちと過ごす時間は、ワクワクと笑顔であふれていました。
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谷山 恭子(たにやま きょうこ)/美術家https://www.children-art.net/taniyama_kyouko/

今回ご紹介するのは、毎回素敵な空間の中で子どもたちの想像力を豊かに広げて下さる、水内貴英さん(美術家)のワークショップです。会場は小学校の一教室。2月の学習発表会まで作品を置いておけるということで、水内さんもいつにも増してダイナミックなアイデアを提案して下さいました。ワークショップのタイトルは、『COLOR』。部屋いっぱいの真っ白で巨大な森の立体塗り絵を子どもたちが彩ります。

ワークショップの導入は、アーティストのオリジナル紙芝居の読み聞かせです。ある学校の仲良し3人組が、ある日の放課後を図書室で過ごす事に。見つけたのは真っ白な本。塗り絵のようだけど特に面白くもなさそうなので本を閉じて帰ろうとすると、「ちょっと待って!」と本の中から声がします。声の主は黄色く塗られたタヌキ。ずっと前にタヌキだけが黄色く塗られたまま、完成されなかった塗り絵だそう。そしてタヌキは仲良し3人組を森の塗り絵に誘い出します…
と、紙芝居を読んだ後にアーティストが会場の部屋へ子どもたちを連れて行くと、そこには本物の大きな森の塗り絵が!という仕掛けでワークショップが始まるのです。
この小学校では、通級の特別支援学級に通う1~6年生が対象で、曜日ごとに参加する子どもたちが違います。そして学年も様々な子どもたちがどんな反応を見せ、どんな色の世界を広げてくれるか、少しの不安と、たくさんのワクワクを胸に制作がスタートしました。
月曜日~金曜日までの5日間、形を描くのが好きだったり、絵具で色を塗るのが好きだったり、昆虫を描いたり、イルカを描いたり、毎日子どもたちの個性も違っていて、少しずつ少しずつ森が豊かに色づいていく様は見ていてとても楽しいものでした。全部は書ききれませんが、とある1日目の様子を紹介したいと思います。
この日のメンバーは5人。「1・2・3!」のかけ声で塗り絵の教室に入ると「わあ~っ!すごい!」と歓声が。すぐにでも制作に取り掛かりたいところですが、まずはアーティストから道具の説明があります。線を描く用のポスカと、色を塗るようにはアーティストがあらかじめ中間色に混色した絵具が用意されています。また、描く時のルールとして、「前の日に描かれた絵や、他の子が描いたものを大事にして下さい。」と声かけをしました。

さてさて、そして子どもたちは思い思いに制作に取り掛かります。ポスカで草むらに蛇を描く子もいれば、大胆に木に絵具で色を塗っていく子も。「自由に」と言われると何から描いていいか戸惑う子もいましたが、アーティストがカブト虫を描いてみせると、そのそばの枝に、アーティストより先にカブトムシを完成させました。

時にはアーティスが見本を見せることもありますが、逆に子どもからアーティストを誘って、「サクラを描こう」と友だちと3人での共同制作を始める子もいました。「芸術の秋!」と言いながら嬉しそうな笑顔で何を描いているのか説明もしてくれます。

そしてふと気付くと、森の一番奥にはイルカのいる海が出現!青一色で素敵な波が表現されていました。また、黙々と画面の端から端まで丁寧に色を塗っていく子は、前日に描かれたふくろうを丁寧に残して作業をしています。上の方はアーティストに肩車をしてもらい、届く限りの高さまできれいにきれいに森を彩っていました。

一方、紫色が気に行った子はブルーベリーを描きたいと言い出しました。他の子が塗った木の上に描いてもいいかとアーティストに聞いて、「その子は他の子が描いても良いって言ってたよ。」と確認後、大きくて美味しそうなブルーベリーを次々に描いていました。

この日は、「エメラルドグリーン」が突然人気の出た瞬間があり、最初に蛇を描いていた子も、エメラルドグリーンを使って草むらにも色を塗って、最後には青色で絶妙な仕上げを施していました。

制作の時間はあっという間に過ぎ、いつの間にか裸足になったり、顔や手まで「芸術!」になっていたり、白い養生シートで覆った床もいい感じで森の地面のようになっていきました。最後には、その日子どもたちが一番頑張って描いたところを発表して終わります。嬉しそうに発表する子どもたちを見ていると、見ているスタッフも嬉しい気持ちでいっぱいです。照明を付けて見ると、また少し森の雰囲気が変わって面白いです。

この学級では、アーティストが帰った後も、毎回先生が子どもたちと振り返りを行って、「たぬきさん」への質問などを掲示物としてまとめてくれていました。アーティストも「たぬきさん」として毎回返事を残して帰ります。2月までの長い設置期間があるので、さらに手を加えたり、いろいろな機会に活用したりして下さるのではないかと思います。また、2月の学習発表会でもアーティストがワークショップの締めくくりとして、紙芝居の続きを披露する予定なので、それまでどんな風に森が変化していくか、また子どもたちがどんな気持ちであの森に関わっていってくれるのか、毎週でも通いたいと、後ろ髪を引かれる思いで学校を後にしました。こんな風に長い間作品を通して関われる機会はめったにない機会で、教室をまるで引っ越し後のように片付けて下さった上、毎回振り返りの打合せでも丁寧に子どもの様子についてお話して下さった先生方にも支えられて、毎日が楽しいワークショップとなりました。
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水内 貴英(みずうち たかひで)/美術家https://www.children-art.net/mizuuchi_takahide/

10日間ほどワークショップを行い、最終的に作品を発表する、という取り組みで、今年は学芸会の発表にいくつか関わりました。前回に引き続き今回ご紹介するのはその中の1つ、小学1・2年生19人と創り上げた作品です。お迎えしたアーティストは楠原竜也さん(振付家・ダンサー)。アシスタントとして村越麻理子さん、ドラムの演奏で有吉拓さんにもご協力いただきました。
この学校では、『まっしろだったカラス』という台本を、森に囲まれた学校の特色を生かして担任の先生が手を加えた、『カラスドロップ』という物語を上演しました。昔は真っ白で美しく、でも怠けものだったカラスたち。ズルをして「あくまになれ~る」という薬で羽を黒く、声を低く変え、森の動物たちが集めた木の実を奪い取ろうとします。しかし、ルールを守って薬を飲まなかったため、元の真っ白な姿には戻れず、動物たちにも正体がばれて森を追い出されてしまいます。そんな時、森が嵐によって火事になり、その様子を見ていたカラスたちが命をかけて火を消すのです。この行いによって動物たちとカラスは仲直りをする、という物語です。
子どもたちが演じるのは、カラス、うさぎ、りす、ねずみ、ふくろうと全て動物です。そこで、低学年らしい身体の動きを取り入れて動物に成りきって演じられるようワークショップを続けていきました。

ワークショップの最初には、アーティストの真似をしたり、身体の一部分をくっつけて様々な形を作ったり、身体の持つ可能性を探るようなワークを行いました。子どもたちと登場する動物がどんな声でどんな姿か、どんなふうに鳴いたり飛んだりするのか、様々な意見を出してもらい、実際身体を動かして表現する、ということにも取り組みました。みんなとてものびのびと表現する子どもたちで、アーティストも今までに見たことのない形が考えだされるなど、驚きの連続でした。
セリフの練習では、誰に向かって伝えようとしているのか、相手を意識して話すことを考えながら、声のキャッチボールや、体育館の一番後ろから声を届けるワークを行いました。大きな声を出してセリフを話すこと、しかも役に成りきって、というのはとても難しい事ですが、アーティストの丁寧な指導と繰り返しの言葉かけで、少しずつ子どもたちの身体の中に表現が染み込んでいくようでした。

セリフがない間も、他の子のセリフを聞いてうなずいたり、身体の向きを話している子の方へ向けたり、少しずつワークショップで行ったことが演技の中に活かされている、とはある日の振り返りでの先生の言葉です。
学校の先生にとって外部からアーティストが入り、ワークショップに取り組むことは、先がどうなるのか不安をともなうチャレンジかもしれません。しかし、アーティストが伝えようとしている事を感じて、子どもたちの変化を丁寧に見て取って下さる中で、先生との関係が良い方向に深まり、協力体制が整うことは、とても嬉しく大切な事だと思います。
さて、そうして演技の練習などもしながら、今度は衣装の制作です。具体物を用いることなく、抽象的な衣装で身体表現を活かすことができるよう、アーティストが下地を整えました。そして、図工の時間をお借りして子どもたちと一緒に制作です。フェルトに様々な種類の生地を、一人ひとりが自分の思うように並べてボンドで貼り付けていきました。カラス役とふくろう役の子は、何枚も必要な羽を、単純作業でも飽きずに一生懸命切っていきます。最後には、保護者の方々や先生方が協力して、放課後の家庭科室で作業して完成させてくれました。

同時に、今度はセリフではなく各動物の動きの完成度を上げていきます。白カラスの登場、各動物たちの登場シーンには、それぞれの特徴をよく表した動きをアーティストが振付していきました。カラスの変身や火を消すシーンでも、臨場感溢れる面白い動きが生み出されていきます。今回の音楽は全てドラムの生演奏で、音にのって子どもたちは動きのきっかけを覚え、のびのびと自由になっていきます。身体表現を支える音の存在は本当に大切なものです。
ワークショップ後半は、アーティストが行けない間は先生に練習をお任せし、ワークショップでは通し稽古や細かい動き、移動、立ち位置の修正などを繰り返し行います。アーティストは子どもたちの限界を決めつけることを絶対にしません。毎回毎回、「こうすればもっと良くなる。」「あの子たちはまだまだ伸びしろがある。」と、ただまっすぐに、子どもたちの表現を高めるために力を尽くしていきます。もう稽古の時間はなく、残すは本番のみ、子どもたちに何かを伝えられるのは本番前の10分間のみ、という状況になっても、子どもたちの表現がさらに良くなることを信じて疑わないのです。

そしていよいよ本番、アーティストが伝えてきた数えきれないほどの大切な事、ワークショップでも子どもたちは十分に応えてくれていましたが、最高の状態で発表できるよう、子どもたちを信じて、期待と緊張で胸が高鳴ります。しかし、始まってしまえば大人の心配などどこへやら、今までで一番の力が発揮できたように思います。のびのびと、大きく身体を動かし、舞台上を思いっきり動きまわり、息をひそめるシーンでは姿勢を低くして相手の様子を伺い、相手に向かって話す事、相手の話を聞く事、今まで一つ一つ積み重ねてきた事が、子どもたち一人ひとりの表現となって舞台の上で輝きました。
期間にすると2カ月、いつも元気いっぱいでワークショップに取り組んだ子どもたち。毎回放課後の打合せにもご協力いただいた先生方、そしてとてつもないエネルギーを注いでいつも子どもに向き合って下さったアーティストの方々、三者の力で、どこにもないたった一つの素敵な作品が完成しました。子どもたちや先生ともう一緒に過ごす事ができないのはとても淋しいですが、演じる事の楽しさや、表現する事の楽しさが、今後も何らかの形で子どもたちの中に残っていくだろうと信じています。
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楠原 竜也(くすはら たつや)/振付家・ダンサー・ APE 主宰https://www.children-art.net/kusuhara_tatsuya/

当NPOでは、10日間ほどワークショップを行い、最終的に作品を発表する、という取り組みも行っています。今回ご紹介するのは、小学2年生60人と創り上げた学芸会の作品です。お迎えしたアーティストはスズキ拓朗さん(振付家・ダンサー・演出家)と、アシスタントの樋口舞さん(ピアノ演奏)。

ワークショップの初回は9月のある一日。初めて出会う子どもたちに、名前と好きな食べ物などを教えてもらい自己紹介をしました。この日は、円になってボールをパスするゲームや、「ネコとネズミ」というゲームなどを行い、これから一緒に作品を作って行く上で、遊びを通して協力することの大切さを伝えました。
そして2回目以降は、本格的に作品作りに入っていきました。台本は『たねまきこびとをたすけだせ』という物語。人知れず種を撒いて四季を作っている「たねまきこびと」たちが、春を嫌う「冬の女王」にさらわれてしまうのですが、森の動物たちが力を合わせて小人たちを助け出し、最後には冬の女王とも仲直りをする、というお話です。
2年生ならではの、笑っちゃったり可愛らしかったりするような動きを取り入れたい、という先生のリクエストもあり、劇中に『線路は続くよどこまでも』を替え歌にした『たねまきこびとのうた』と、元々台本に含まれていた『かじる かじる!』という曲を使ってアーティストがダンスを振付しました。『たねまき~』は、小人たちが種をまいている様子を歌にし、劇の最初と、最後には全員で歌い踊ります。『かじる~』は、野ねずみたちが、力が弱いながらも小人たちを助け出すために、自分たちの最大の武器、歯で扉をかじって助け出す、というシーンで使われます。
ダンスの練習は、アーティストもびっくりするほど子どもたちの覚えが早く、1日で2曲の振りを伝えることができました。歌いながら踊るという2つの事を同時にするのは、低学年にはまだ難しいところもあるようでした。それでも、決めのポーズでは、「飛ばなくてもいいよ。」と言っても、自然に身体が動いてジャンプする子どもたち。繰り返し練習を重ねていくうちに、楽しそうに踊る子どもの姿に何度もエネルギーをもらいました。
そしてダンスの振り付けが終わった後は、台本に入っていき、セリフや立ち位置など、アーティストの演出を加えていきました。60人を同時進行はできないので、どうしても待ち時間が長くなる場面もあります。待ち切れずに動いたりしゃべったり、ザワザワする子どもたち。移動の場所やセリフがなかなか覚えられない子もいて、最初はこの先どうなるかと不安になる場面もありました。しかし、先生方のご指導の成果もあり、子どもたちは回を重ねるごと、セリフもポンポンと言えるようになり、ふと気づけば静かに話を聞くことができるようにもなっていました。

実際に舞台の上で練習してみると、大道具や小道具、ひな段の設置の具合によって随時変更が生じることもあります。また、発表時間には限りがあるので、時間内に収めるための演出の変更もありますが、その場その場のアーティストの言葉を聞き、たとえ時間がかかっても、子どもたちは楽しそうに応えてくれました。ワークショップの記録を読み返すと、アーティストが、細部までより作品を良くするためにどれほどたくさんの演出を加えたかに驚きます。そしてそれほどの演出でも、子どもたちはいつも元気いっぱい、一度も嫌がることなく毎回毎回楽しく練習に参加していたことも驚きでした。
セリフをただ話すだけでなく、くま、さる、野ねずみ、うさぎ、りす、きつつき、きつね、たぬき、ふくろう、冬の女王、北風のせい、雪ひめ、さばくの王子、とうい一つ一つの役にあった身振り手振りと衣装も工夫しました。どんな状況でのセリフなのか、どんな性格の役なのかをよく表した、とても面白い工夫が子どもたちからもたくさん出てきました。そうして、どんな役になった子も、一人ひとりがキラキラとした存在感を放つようになったのです。

アーティストは毎日学校には通えないし、限られた日数の中でしか練習に加わることができないので、アーティスト不在の日も先生と子どもたちに頑張ってもらうしかありません。きっと学芸会の練習の時数も限られている中ですが、大道具や小道具も先生と子どもたちの作品です。野ネズミがかじったことが分かるように穴のあく扉や、草と雪なども舞台を盛り上げる大切な作品。初めて使用する時に、「作ったよ~!!」と、嬉しそうに自慢げに見せに来た子どもたちにまた顔がほころびました。
そうして日々はあっという間に過ぎ、いよいよ本番です。まだまだ練習が足りてないところがあるかもしれない、もっともっと加えたい演出がある、アーティストも様々な思いを抱えての本番だったと思います。見守るスタッフもドキドキとワクワクで胸がいっぱい。これまでの過程を知っているだけに、発表だけを一つの作品としてみるのは至極困難で、一瞬一瞬、「初日は○○だった子が、あんなに!」などという思いがこみ上げてきます。セリフの間が空いても子どもたち同士で声かけをしたり、「フォーメーションフォーメーション!」囁きながら立ち位置に走って移動したり、一生懸命な子どもたち。観客もいつの間にか引き込まれて楽しそうに見てくれていました。
「種とは育つものであり、育てるもの。子どもたちはその両方をこのかわいい台本から自由に読み取り、奇想天外な方向へと撒き散らしてくれます。まっすぐ伸びる芽…クネクネ育つ芽…寄り道する芽…正解のない育ち方。子どもたちがどんな花を咲かせるのか楽しみです。」というのは当日パンフレットに寄せたアーティストの言葉です。

本当に60人一人ひとりが個性豊かで、毎回会うたびに、飽きずに何度もアーティストの名前を連呼したり走り寄ったり、熱烈な歓迎をしてくれる楽しく面白い子どもたちでした。この出会いを通じて、アーティストと子どもたち、先生が協力して一つの作品を創り上げていったことが、一人ひとりの心の中に、これからもずっと何らかの形で残っていってくれたら、そしてみんながこれからも素敵な花を咲かせてくれたら、と願っています。
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スズキ 拓朗(すずき たくろう)/振付家・ダンサー・演出家
https://www.children-art.net/suzuki_takuro/