都内公立小学校・特別支援学級、1~6年生の子どもたち21人と取り組んだワークショップ。アーティストの北川結さん(ダンサー・振付家・イラストレーター)、アシスタントの内海正考さん(ダンサー・三味線弾き)と出会い、みんなで一緒になって踊ること、一人で踊ること、どちらものびのび楽しんだ2日間になりました。

事前の打合せでは、先生から「いろいろな身体の動かし方を経験して、子どもたちがとにかく楽しいと思えるような時間にしたい」また、「音楽がある中で身体を動かしたい」というリクエストがあり、耳なじみのあるJ-POPに加え、内海さんの弾く三味線の生演奏で踊ってみることを検討して、当日を迎えました。

出会いの瞬間はいつだってドキドキ。少し緊張している様子もありながら、北川さん・内海さんの「おはようございまーす!」という大きな声に、子どもたちも負けていません。今度はうってかわって、蚊が鳴くくらいの北川さんの「おはようございます」に、子どもたちにも自然と笑顔が。

最初は、アーティストの動き真似からスタート。みんなで大きな円をつくり、中心に居る北川さんをじっくりみてみると、一見動いていないようでゆっくりと手があがっています。ぽつぽつと気づく子が出てきて、最後はみんなで大きく手を天井に。次第にダイナミックな動きになっていき、途中で音楽がかかるとリズムに乗ってノリノリで真似する子どもたちの姿がありました。動きの見本となるリーダーもアーティストから先生、そして子どもたちにバトンタッチされ、スキップ・ジャンプの激しい動き、なめらかな動き、一人ひとりから発信される個性的な動きをみんなで楽しみました。

1日目の後半は、内海さんの弾く三味線の即興演奏にあわせて身体を動かしました。しっとりした曲調の中、ゆっくり歩いてみたり、立っているところからスローモーションで寝そべって目をつぶってみたり。中には、ものすごく時間をかけて身体を倒すことにハマる子もいましたが、みんなが自分のペースを貫き、全員が気もちよくやりきれるように“待つ”雰囲気が素敵でした。今度は陽気な曲調にあわせて自由に歩き回り、すれ違った友だちと手と手でタッチ、足と足でタッチ。だんだんと自分たちで動きを自由に発見していく子どもたち。すると、何かを食べる動きをしながら歩いている子が!それを見つけた北川さんが「みんなも好きなものを食べながら動いてみよう!」と声をかけると、そば?バナナ?お寿司?いろいろなものをイメージして楽しそうに食べ歩く姿が見られました。さらには、出会った人と食べ物を交換しあうというアイデアも生まれ、和やかに交流する子どもたち。落ちているものを拾って「おいしー!」というユニークな姿も。

最後に各々の考える「めちゃめちゃかっこいいポーズ」を決めて、ワークショップ終了。そして、感想を伝え合う時間へ。この2日間特徴的だったのが、こまめに感想タイムがあったこと。北川さんからの「今の動きはどうだった?」「三味線の音で動いてみたのはどうだった?」の問いかけに、それぞれが思ったことをたくさん共有してくれました。印象的だったのは、「ダンスほとんどおどってないじゃん!」という感想。確かに、テレビでみるダンスや、運動会で振りを覚えて踊るダンスとは少し違ったかもしれません。北川さんは嬉しそうに「ゆうちゃん(北川さんの呼称)には、一人ひとりの動きがすごいダンスだったよ」と伝えてくれました。

・・・

2日目は、子どもたちも最初からエンジン全開!ウォーミングアップの後は、2人組のワークに挑戦しました。言葉を使わずに、相手と呼応するように動き、最後は何かしらのポーズで止まります。相手と少し離れたところから始まり、「前に進み出て、相手と動いて、止まる」とルールはシンプルですが、相手より先に出るのか・後にでるのか、相手に協調するように動くか・まったく違った動きをしてみるか、どこでどのように止まるかなど、選択肢は無数にあります。みんなに温かく見守られながら1組ずつ挑戦。相手の出方を探るように目と目をあわせて丁寧に歩み出たり、相手のポーズとシンメトリになるようにポーズしてみたり、どう止まろうかじっくり考えて最後は相手が出した足にタッチするようにポーズしたり、一方がポーズした周りをぐるぐる軽やかに動き回り最後は相手の前でストンと正座で着地したり、毎回、二人の高い集中力と予想を超える素敵な動きに大きな拍手がおくられました。北川さん・内海さんからも、一人ひとりの素敵だったところについてコメントがおくられ、子どもたちも先生たちもみんな嬉しそう。

温かい空気で満ちた中、最後は一人ずつ三味線の音と踊ることに挑戦。みんなで大きな円になるように座り、その中心で心ゆくまで踊ります。「内海くんがあわせてくれるの?」という質問に、「内海くんもみんなにあわせるし、みんなも音をきいてあわせることもできるかも。さっき二人(組のワーク)で止まったみたいに、今度は内海くんと一緒に終わりを見つけてね」と北川さん。

何しよう?と戸惑う様子もなく、元気な曲調と一緒にくるくる回る姿、手を羽ばたかせるような動き、ジャンプするようなステップ、日本舞踊のようなしなやかな動き、だだただ佇むようなポーズと三味線の儚げな音・・・一人ひとりが三味線との素晴らしいセッションを見せてくれました。内海さんと目をあわせて最後のポーズを決める子も。三味線の音に子どもたちがあわせたとも、踊りに内海さんがあわせたとも言い切れない、ゆるやかな音と身体のコミュニケーションを見ているようでした。もちろん、毎回一人ひとりに自然と大きな拍手が。

一番最後の感想タイムでは、にっこり笑顔で躍動感たっぷりに手足を動かし、動きでこのワークショップの感想を表現してくれる子も。ポジティブなエネルギーが伝わってきました。

ワークショップ後、先生との振返りでは、「言葉で表現することが苦手な子もいるが、身体で自分を表せることを経験できた」「いつもだったら時間の制約などで大人が“終わり”としてしまうような場面でも、子どもたちの選択を“待つ”ことができたのがよかった」といった感想をいただきました。

アーティスト・子どもたち・先生方みんなが一緒になって、気もちよく身体を動かしたり、ちょっぴり挑戦したり、お互いの表現に驚いたり、拍手をおくったり、時には応援したり。ダンスを通して、自然と自分も相手も尊重できるような温かい雰囲気に包まれた素敵な2日間でした。


このワークショップは、「ブリヂストン BSmile募金」より助成いただき実施しました。

 

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