小学6年生2クラス62人の子どもたちと取り組んだ、中山晃子さん(美術家)のワークショップをご紹介します。
完成させることや何かに縛られてつくるのではなく、その場で立ち上がってくるモノやコトを楽しみ「アートってすごい」と感じられるような場や、アーティストとの出会いをつくりたい、という先生からのリクエスト。
「なぜ絵は乾いてしまうのだろう」という疑問から、様々な絵具や素材が相互に反応し変容し続ける姿を”Alive Painting”として描く中山晃子さんと、各クラス90分間のワークショップを行いました。まるで生き物のように動き続ける液体、絵と音が呼応していく時間の流れ、変容するモノとコトをつくり出し眺める時間から、子どもたちは何を感じたのでしょうか。
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真っ暗な体育館に入ったら、早速中山さんのパフォーマンスが始まります。挨拶も説明もないのでスクリーンの謎の映像を見て「何これ?」など小声で話す子どもたち。しかし、音が鳴り始め、映し出された絵が動き始めると、あっという間に集中していきました。何がどうなっているのか気になって、中山さんの方を覗き込もうとする子もちらほら。15分ほど経ったところでパフォーマンスを中断し、中山さんが簡単な自己紹介と、作品がどうやって描かれているのかを説明しました。
その後は、再びパフォーマンスを見る時間。でも、今度は「座っていなくても良いから好きな場所でどうぞ」と中山さん。その途端に中山さんの真横に陣取ったり、並べられた絵具の周りに集まったり、それぞれが興味の赴く場所で絵を眺めていました。
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子どもたちの中にもいろいろな想いが湧いてきたところで体育館を明るくして、改めてどんな道具があるのか、子どもたちの質問も受付けながら機材の仕組みや材料の説明をしました。普段見慣れない形の瓶もあり、外側を見るだけでは何が入っているのか分からないものも。「ここにあるのは、何かアクションを起こすと何かを起こすもの」と中山さん。いわゆる絵具だけではなく、粉や墨汁、油なども用意されていて、子どもたちは「これ何だろう?」と気になるものをどんどん手に取ったり、質問をしたりしながら、自分たちで描く時に使いたいものを選んでいきました。
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後半は、選んだ絵具などを使い「一筆入魂」ということで、一人一筆(もしくは一振り)ずつ絵を描いていきました。それぞれの材料の特性によって画面上に様々な反応が生まれ、前の人が描いた跡を意識しながら描く子や、自分の気持ちで思い切って筆を動かす子、それぞれのやり方で描いていきました。事前にスタッフが予想していたよりも、子どもたちは迷いなく、でもそれぞれの想いを乗せて、一筆一筆色を置いていました。子どもたちは、画面で起こる変化や反応に「おお!」「きれ~い」と時折感嘆の声も挙げながら、どんどん絵を描いていきました。
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一通り体験した後は、次に何がしたいか子どもたちに委ねました。絵具に興味がある子は2つめの絵具を選んで続きを描き、それ以外にも好きなやり方で絵に関わっていきます。スクリーンの裏側に回ってただただ眺めている子、スクリーンの前に身体の影を映してみる子、タブレット端末を使って写真を撮る子など。また、途中で音の仕組みの説明もしました。絵を描いている間に流れる音楽は、既存の楽曲だけでなく、その場で加工したり、作業の音を拾ったりしてつくられているのです。普段の声を拾うマイクではなくて、作業をしている手元の音を拾うマイクや、その音にエフェクトをかけて時間を遅らせて再生できる機械の説明なども。音に興味を持った男の子たちは、機会をいろいろさわって試しながら、まるでジャングルのような音風景をつくり出していました。
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思い思いの時を過ごしたワークショップの中で、中山さんは絵具についても丁寧に話をしました。長い年月をかけてつくられる鉱物や宝石からできている絵具は、人間が加工したものでもあるけれど、生き物であり「バサッと出した時に、その絵具の山は人間のたくさんの文化の中で実はできていたものなんです」と。「この(絵具の)山が一体何年かけてつくられているものなのか。一体、いくら分のモノが、ここに、あるのか。でも何で線を描くのか」と子どもたちに問いかけました。
振返りでは、先生から「ここを見なさい」という大人の指示ではなく、子どもたちそれぞれの見方が広がっていたとの感想をいただきました。中山さんとの出会いを通して、一人ひとりの中に、ザワザワとした何かが、少しでも生まれていたら良いなと思います。動き出していないように見えた子たちの中には何が起こっていたのかな、と想像を膨らませつつ、何かを感じて動き始める気持ちをじっくり、ゆっくり待つ楽しさを思い返しています。
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中山 晃子(なかやま あきこ)/美術家
https://www.children-art.net/nakayama_akiko/

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